PCOSの女性は、将来、生活習慣病にかかりやすい

不妊原因になる病気

2015年03月07日

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism

PCOSの女性は長期間でみると心疾患や糖尿病などの生活習慣病で入院するリスクが高いことがオーストラリアで実施された調査で明らかになりました。

西オーストラリア大学の研究で西オーストラリア州の15歳以上でPCOSと診断された2,556名の女性の1977〜2011年の入院治療経験を同じ年齢で非PCOS女性25,660名と比べました。

その結果、調査終了時の被験者の年齢の中央値は35.8歳で、PCOS女性は非PCOS女性に比べて、お産やケガなどを除いた入院治療経験が多い(入院回数の中央値:5 vs 2)ことがわかりました。

各疾患別の入院治療経験者の割合のPCOS女性の非PCOS女性は以下の通りでした。

・成人後発症糖尿病:12.5% vs 3.8%
・肥満:16.0% vs 3.7%
・高血圧:3.8% vs 0.7%
・静脈血管性疾患:10.4% vs 5.6%
・喘息:10.6% vs 4.5%
・精神障害:14.0% vs 5.9%
・うつ:9.8% vs 4.3%

このようにPCOS女性は、将来、生活習慣病や精神疾患にかかりやすいことから、生涯の健康のための適切なケアが必要であると結論づけています。

pcos.png

PCOSは、遺伝的な要因をはじめ、食生活や生活習慣が起因になって、生活習慣病に先駆けて発症すると捉えるべきなのかもしれません。左図のようなイメージです。

PCOSが発症したということは、そのままの生活習慣を続けていると、将来、糖尿病などの生活習慣病が発症する可能性が一般的な確率よりも高くなるというわけです。

そのため、PCOSと診断された女性は排卵障害や無排卵の治療を受け、妊娠を目指すだけでなく、そのことを機に、自身の体質をより正確に把握し、将来、できるだけ生活習慣病にかからないような生活習慣を意識することがとても大切です。


コメント

小さな卵胞がたくさんみられる状態の卵巣のことを多嚢胞性卵巣といい、超音波検査で確認できます。ただ、多嚢胞性卵巣であるだけでは、多嚢胞性卵巣症候群とは診断されません。多嚢胞性卵巣であることに加えて、排卵しづらい(排卵障害)、あるいは、排卵しない(無排卵)という月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすことが、最新の多嚢胞性卵巣症候群の診断基準とされています。

ごく簡単に言えば、男性ホルモンの値が高いため、卵胞は発育するものの途中で成熟が阻害されてしまい、排卵障害や無排卵を招くことで、不妊の原因になるのが多嚢胞性卵巣症候群というわけです。

ただ、症候群なわけですから、その症状は、決して、一様ではなく、肥満や内臓脂肪過剰、また、毛深くなるなどの男性化傾向がみられることがあったり、インスリン抵抗性といって、インスリンの効き目が悪くなって、糖や脂質の代謝に異常をきたす状態が、男性ホルモン値が高い背景にあることがあり、そのメカニズムはとても複雑なようです。

そのため、PCOSは、排卵障害や無排卵の原因というだけでなく、将来的に、高血圧症や脂質異常症、心血管系疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスクの高いことが知られてきました。