ハーバード公衆衛生大学院の研究グループは、妊娠中の鉄のサプリメント摂取と貧血や妊娠や出産のリスクとの関係を調べるために、2012年5月までに発表された48のランダム化比較対照試験や44の疫学調査の研究データを調査、分析しました。
その結果、妊娠中に鉄のサプリメントを摂取した女性は摂取しなかった女性に比べて、妊婦の平均ヘモグロビン量が多く、貧血や鉄欠乏、鉄欠乏性貧血、そして、低出生体重児のリスクが低かったことがわかりました。
また、鉄の摂取と早産のリスクとの統計学的な関連は見られませんでしたが、疫学調査では妊娠初期の貧血は低出生体重児や早産のリスクを高めたことがわかりました。
さらに、1日の鉄の補充する量が10mg増えるごと(最大で1日66mg)に、貧血のリスクは12%低く、出生体重は15.1g増え、低出生体重児のリスクは3%低くなりました。
コメント
女性は毎月の生理による出血で鉄が失われるため不足しやすいミネラルであるにもかかわらず、妊娠前から妊娠中に必要とされる鉄の量が増加します。
妊娠中期・後期には、妊娠前の倍量強程度、摂る必要があります。厚生労働省の食品摂取基準によりますと、30、40代女性の推奨量が11mg、妊娠に際しての付加量が妊娠初期では2.5mgなのに対して、中期から後期になると15mgになるからです。
もしも、鉄が不足すると、赤血球を構成するヘモグロビンが十分につくれなくなるために貧血を引き起こします。
妊娠すると必要量が多くなるので、貧血になるのですが、妊娠前は何の自覚症状がなくても、潜在的に鉄が不足したまま、妊娠すると貧血が起こり、それだけでなく、赤ちゃんの成長にも問題がおこりやすくなるというわけです。
そのため、妊娠を望む女性は血中のフェリチン濃度を測定することで、潜在性鉄欠乏かどうかを調べることが出来ます。フェリチンというのは貯蔵鉄のことです。要するに、鉄の必要量の増加に備えて貯蔵している鉄の量が少なければ、補充する必要性が高いということになるからです。
まずは、普段の食事から鉄を摂取することを心掛けることが大切です。ただし、食品中の鉄はヘム鉄と非ヘム鉄があって、吸収率はヘム鉄が約30%なのに対して非ヘム鉄は約5%とずいぶん差があります。吸収のよいヘム鉄は主に動物性食品に、吸収の悪い非ヘム鉄は植物性食品に含まれます。
ヘム鉄を多く含むレバーや赤身の肉を食べることが大切なのですが、毎日、たくさんは食べられません。
そのため、医薬品の鉄剤やサプリメントで補充することが現実的な対策になります。ただし、鉄剤は非ヘム鉄で、サプリメントでもヘム鉄と非ヘム鉄があります。医師から処方された鉄剤で、むかつくなどの副作用があれば、ヘム鉄のサプリメントがベターです。
また、鉄はヘモグロビンの生成の欠かせないだけでなく、ミトコンドリアでエネルギーを産生したり、抗酸化酵素が働く際にも不可欠です。そのため、「妊娠するためにも」鉄は欠かせない重要なミネラルなのです。
妊娠前から補充するのが得策だと思います。