男性の精子濃度が17年で32%減少

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2012年12月06日

Human Reproduction

1989年から2005年の17年で、フランス人男性の精子濃度が32.2%、正常な形態の精子が33.4%、それぞれ減少していることが判明しました。

フランス衛生監視研究所(InVS)の研究者らは、1989年から2005年までの17年間に、パートナーが卵管障害が原因の不妊症で体外受精を受けた男性26,609名の精子濃度、運動率、正常形態率を調べました。

その結果、調査期間の間に精子濃度が32.2%、年に1.9%の割合で減少していることが判明しました。平均年齢35歳の男性では1989年に平均7,360万/mlだったのが、2005年には4,990万/mlに減少していました。

また、同じ期間の正常形態精子は33.4%減少でしたが、運動率は49.5%から53.6%に上昇していました。

研究者らは、精子の数や正常な形態の精子数の減少がフランス人男性全体の傾向と考えてよいこと、また、被験者はパートナーの女性が卵管障害で体外受精を受けている男性であり、精子の質に影響を及ぼす生活習慣等を考えると、全体傾向はもっと悪化していると考えられるとしてます。

コメント

1992年にデンマークのコペンハーゲン大学のスカケベック教授がそれ以前の50年間に男性の精子数が平均1億1300万個から6600万個に半減しているというショッキングな論文を発表し、話題になりました。

ただし、男性の精液検査は血液検査のような「一般的な検査」ではないため、正確な測定が困難であるため、男性の精子数の減少については、「疑い」の域を出ていませんでした。

ところが、今回のフランスの研究では被験者数が多いことから、これまでの研究よりは信頼性が高いのかもしれません。

研究者は、その原因として環境ホルモンの影響を挙げています。

そして、それは遺伝性発現の度合いに影響を及ぼし、次の世代に引き継がれるとかんがえられるとしています。

35歳を平均年齢とした平均の精子濃度は1ミリリットルあたり4,990万個で、WHOの基準値である1,500万個を上回ってはいますが、平均値であることを考えると、基準値以下の男性が増えていることは間違いありません。精子濃度が4,000万/mlを下回ると、自然妊娠の確率は明らかに低下することから、男性の妊娠させる力は低下しているはずです。

現代では、健康な男性でも生殖能力を守るための対策を講じなければならないのかもしれません。

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