研究チームは、31名の健康な男性を対象に、運動習慣が精液検査の数値や精子をつくる働きに関与するホルモン環境にどのように影響を及ぼすのかを調べるための試験を実施しました。
過去1年間にサイクリング以外の有酸素運動を定期的に行っている男性(16名)と運動習慣のない男性(15名)の精液検査とホルモン検査の結果、前進精子の割合の平均は運動習慣のある男性で60.94%だったのに対して、運動習慣のない男性では56.07%、正常な形態の精子の割合の平均は運動習慣のある男性では15.54%だったのに対して、運動習慣のない男性では14.40%でした。
一方、精子形成を促すホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)や男性ホルモン分泌を促すホルモンであるLH(黄体形成ホルモン)、男性ホルモンの平均の濃度を、運動習慣のある男性と運動習慣のない男性を比較してみると、それぞれ、5.68U/l対3.14U/l、5.95U/l対5.08U/l、7.68μg/l対6.49μg/lと、いずれのホルモンも運動習慣のある男性のほうが高い濃度を示していました。
さらに、テストステロン/コルチゾール比は、0.46対0.32と、運動習慣のある男性のほうが高い割合を示していました。
これらのことから、運動習慣は、男性の精子形成にかかわるホルモン環境をより良好にすることで、精液の質をよくし、男性の生殖能力を高めることに寄与する可能性が高いと結論づけています。
コメント
適度な運動習慣は、男性にとっても、女性にとっても、生殖能力を維持したり、高めたりすることにプラスの影響を及ぼすようです。そもそも、程度な運動は老若男女を問わず、心身のトータルの健康に寄与するわけですから、当然と言えば、当然と言えます。
生殖機能は、特別な身体の働きではなく、本来的に備わっているものですから、人間というのは、身体を動かすことであらゆる働きが正常に機能するようにできているようです。
そのため、お子さんを望まれる男性も、女性も、適度に運動することがとても大切だというわけです。
ただし、運動であればどんな運動でもよいかというと、そうではなく、男性でも、女性でも、過激な運動習慣は、かえって、生殖機能を低下させてしまうこともわかっています。
男性では、トライアスロンや自転車レース、水球などのアスリートは男性不妊のリスクが高いとの報告が多数あります。
ウォーキングなどの穏やかな運動が理想的なようです。
ただし、運動をしない男性でも運動率や正常精子形態率が基準を下回っていたわけではありません。あくまでも、運動習慣のある男性を下回っていたということに過ぎません。
ですから、運動をしないと男性不妊になるというわけではありませんが、適度な運動習慣のプラスの影響は明らかなわけですから、単に、妊娠という目先のことだけでなく、お子さんや家族への責任という観点からも、運動によって、健康な心身を維持することが大切なことではないでしょうか。