ビタミンDと精子の運動能力や形態との関係

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2011年03月24日

Human Reproduction

ビタミンDの精子は、運動能力を高め、精子の細胞内へのカルシウム吸収を促すことで精子の受精能力の獲得に関与していることがデンマークで実施された試験で明らかになりました。

デンマークの研究グループは300人の健康な男性を対象に、血液中のビタミンD濃度と精液の質との関係を調べました。また、40人の男性の精液サンプルを対象に、ビタミンDが試験管内の精子内細胞のカルシウム濃度と精子運動能力、先体反応にどのように影響を及ぼすのかを調べました。

その結果、ビタミンD濃度が50nM未満で、ビタミンDが足りていない男性は全体の44%に達しており、ビタミンD濃度が高いほど、精子の前進運動能力が高いことが分かりました。

ビタミンD欠乏(25nM未満)の男性は、ビタミンDが十分(75nM以上)な男性に比べて、精子運動率や前進精子運動率、正常精子形態率が低かったとのことです。

また、試験管内では、ビタミンDは精子内細胞へのカルシウム吸収を促進し、精子運動率を高め、卵子の中に進入するための先体反応を引き起こすことが確認されました。

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ビタミンDは脂溶性のビタミンの一つで、植物由来のビタミンD2と動物由来のビタミンD3がありますが、ヒトではビタミンD3が、活性型ビタミンDとして働いています。

主な役割は腸からのカルシウムの吸収を促進し、吸収されたカルシウムを骨へ沈着させ、骨の成長や健康に深く関与しています。また、血中のカルシウム濃度を調節する働きもあり、免疫やがん予防などをはじめとして多彩な働きをすることが知られています。

ビタミンとしては珍しく、紫外線を浴びることで体内で合成されます。週に2回、5~30分は日光を浴びることが推奨されています。食品では、かつおやあんこう、鮭などに豊富です。

このビタミンDが男性の生殖機能にも影響を及ぼすことは動物による実験で確認されてから、男性ホルモン濃度や精液の質にも関わっているとの報告があります。

ただ、精液の質については関連しないとの報告もありますが、今回の試験で精子の運動能力や形態だけでなく、受精のために卵子の中に進入するときの先体反応を引き起こすことが確かめらました。

やはり、ビタミンやミネラルなどのベーシックな栄養素は卵子だけでなく、精子の健全な成熟や働きに不可欠な役割を担っているようです。

また、このビタミンは女性の生殖にとっても重要で、新生児の体重や妊娠期間に影響を及ぼすことが知られていて、不足すると妊娠合併症や新生児の発育障害のリスクが高くなります。

さらには、体外受精を受けている女性うでは血中や卵胞液中のビタミンD濃度が高いほど妊娠率が高まるとの報告もあります。

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