体外受精と併用する鍼治療の有効性を調べるために、合計2670名を対象に実施された14の無作為化対照試験の結果を統合し、分析しました。
鍼治療を採卵日に実施した試験、胚移植の日に実施した試験、また、胚移植の日と2、3日後に再度実施した試験でも、比較対照群に比べて、臨床妊娠率や出産率、流産率において顕著な違いは見られなかったとのこと。
このことからイギリス生殖協会は、体外受精に鍼治療を併用しても、その後の妊娠率や出産率、流産率が向上するとの証拠は得られなかった、体外受精に鍼治療を併用しようとしている人はそのことを知っておくべくだと結論づけています。
コメント
鍼治療によって不妊治療の成績がよくなるのかについて、これまでの文献では、よくなるとするものと、よくならないとするものの両方存在します。
あくまで、イギリスで体外受精を受けている女性が、採卵日や胚移植の日に鍼治療を受けても、体外受精の成績が全体としてよくならなかったということです。
たとえば、もっと、以前から鍼治療を受けていればどのような効果が得られたのかは分かりませんし、鍼治療の治療内容は統一的なものではなかったようですし、鍼治療を実施する人の技術レベルにバラツキがあった可能性もあります。
実際に、鍼治療の有効性を調べる試験の方法や治療内容のバラツキなどの問題点が指摘されています。
ですから、このことをもって、鍼治療は効果なしと一概に決めつけるわけにかいきません。
そもそも、体外受精を受けているカップルで、鍼治療をはじめとする代替医療を受けているケースは少なくありません。
それは、ひとえに、体外受精の平均の妊娠率が低いためで、それにひきかえ、高額な治療費用がかかることから、出来るだけ体外受精の治療成績を高めるような努力をするのは当然のことでしょう。
そもそも、体外受精の妊娠率が確実に高くなるような手段は存在しません。
そして、鍼治療には、血流をよくしたり、精神的にリラックスする効果は認められているわけで、要は、鍼治療も患者側がどう使うか、どのように活用するのかでしょう。
鍼治療を受ける目的を、ある程度、明確にし、それにふさわしい技量を備えた先生や治療院を選ぶことが大切ではないでしょうか?