原因不明不妊カップルの男性の酸化ストレスと脂肪酸組成の特徴

男性不妊原因

2010年01月06日

Human Reproduction

精液検査は正常な原因不明不妊カップルの男性は、血液中及び精液中の酸化ストレスマーカーの値やオメガ6脂肪酸の濃度が高く、反対に、オメガ3脂肪酸の濃度が低いことが、チェコの研究者中心とするチームが実施した試験によって明らかになりました。

精液検査は正常な原因不明不妊カップルの男性38名と不妊でないカップルの男性17名を対象に、血中、及び、精液中の過酸化損傷のマーカーであるTBARS(チオバルビツール酸反応物質)の値、そして、不飽和脂肪酸のアラキドン酸(オメガ6脂肪酸)とDHA(オメガ3脂肪酸)の濃度を測定しました。

その結果、原因不妊不妊カップルの男性の酸化マーカーは、そうでない男性に比べて、血液中(14.5 vs 7.0nmol/mcg protein)、精液中(16.0 vs 8.0nmol/mcg protein)ともに高く、また、オメガ6脂肪酸であるアラキドン酸濃度も、血液中(48.5 vs 38.5nmol/mcg protein)、精液中(49.0 vs 36.5nmol/mcg protein)ともに高いことがわかりました。

反対に、原因不妊不妊カップルのオメガ3脂肪酸のDHA濃度は、そうでない男性に比べて、血液中(2.2 vs 2.6nmol/mcg protein)、精液中(1.4 vs 2.8nmol/mcg protein)ともに低いことがわかりました。

このことから、精液検査が正常な原因不明不妊カップルの男性は、血液中、精液中、ともに、酸化ストレスマーカーやオメガ6脂肪酸濃度が高く、オメガ3脂肪酸の濃度が低いことが分かりました。

コメント

精子には酸化ストレスに影響を受けやすい不飽和脂肪酸が多く、とにかく、活性酸素の攻撃にもろいという弱点があります。

精子が活性酸素の攻撃を受けると、精子の運動率や正常形態率が低下したり、DNAが損傷を受け、受精障害の原因になる可能性が指摘されています。

今回の報告は、精液所見は正常な原因不明不妊カップルの男性は、普通に妊孕性を有するカップルの男性に比べて、酸化ストレスが高い、すなわち、活性酸素の攻撃を強く受けていること、また、オメガ6脂肪酸の濃度が高く、反対にオメガ3脂肪酸の濃度が低かったことを確かめています。

このことは、まずは、外食やファーストフードを食する頻度が高く、バランスのよい食生活をおくれていないため、オメガ6脂肪酸がオメガ3脂肪酸優位になり、一方、喫煙や飲酒、ストレスによる活性酸素の大量発生による酸化炎症反応を促進させて、精子の質を低下させていることが、たとえ、精液検査が正常であったとしても、妊娠しづらくなる原因の一つになっていることが推測されます。

もしも、特に原因がないにもかかわらず、なかなか授からないという場合には、まずは、男性も、野菜や果物を豊富に食べて、オメガ3脂肪酸の豊富な魚を週に2、3回は食べ、ナッツ類などを意識して摂るようにし、タバコやお酒を控え、ストレスマネージメントに取り組み、また、抗酸化物質をサプリメントで補充することで、抗酸化作用を高め、また、炎症しにくい体質に改善することで、お子さんを授かりやすくなることが期待できるでしょう。