ホーム>>メルマガ

メルマガ

不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点で、お届けしています。当メルマガは、現役の医師がサポートしています。配信:毎週

メールマガジンの登録

下の入力フォームにEメールアドレスをご入力下さい。

メルマガ最新版

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.1085            2024/4/14
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:生命を育む春を迎えて
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


トピックス Apr. 2024________________________________________________

 生命を育む春を迎えて
--------------------------------------------------------------------
春は、植物は芽を出し、花々はつぼみをつけ、地中の虫が動き始める、生命力溢れる時です。

動植物は自然サイクルと一体のようですが、私たち人間も、他の生き物と同じように、これからの季節は妊娠するにはよい環境であるはずです。

そのことを示唆するかのような研究報告が、オーストラリアの不妊治療クリニックの研究チームによりなされ、ヨーロッパ生殖医学会誌に掲載されています(1)。

それは、夏に採卵した卵子を用いた凍結胚移植の方が、秋に採卵した卵子を用いた場合よりも、胚移植後に出産にまで至る確率が高いというのです。

2013年1月から2021年12月までの間にオーストラリアにパースにあるキングエドワード記念病院で実施された3,659件の凍結胚移植の結果を解析し、わかったとのこと。

凍結胚は、1,835人の患者の2,155周期の体外受精で得られたもので、研究グループはオーストラリア気象局の気象データを用いて、9〜11月を春、12〜2月を夏、3〜5月を秋、6〜8月を冬として、採卵時の季節と治療成績との関係を解析しています。

その結果、夏に採卵した卵子を用いた凍結胚移植では、秋に採卵した卵子を用いた凍結胚移植に比べて、お子さんを出産するオッズが30%高いことが明らかになり、採卵時の季節が出産に至るまでの確率に影響を及ぼすことが明らかになったとしています。

また、日照時間も影響しているようで、日照時間が「長い」ときに採卵された卵子を用いた凍結胚移植でも、「短い」ときに採卵された卵子を用いた凍結胚移植に比べて、生児出産のオッズが28%高かったとのこと。

もちろん、治療成績に最も強い影響を及ぼすのは女性の年齢であり、その他、さまざまな要因が複合的に影響します。

また、今回、ご紹介した研究は後ろ向き研究で、この結果をもって結論づけることは早計です。

ただし、自分たちで取り組めることという観点から考えた場合、自然のサイクルに体内時計を同期させることは意味のあることかもしれません。

それは、春は自然界に生命力が溢れる季節であり、私たちも生活リズムを自然のサイクルにあわせることで、その恩恵を受けることが出来るのではないかとという世界観をもつことです。

そして、そのためのポイントが「体内時計を整えること」です。

一言で言ってしまえば、しっかり、体内時計をリセットするということです。

私たちに備わった体内時計は1日は25時間なので、毎日、きちんと、リセットしなければ、どんどん乱れていってしまいます。

年齢が高くなればリセット力が低下していくのでなおさらのころです。

そのため、毎日、"意識的に"体内時計をきちんと合わせ、しっかりと、生体リズムを整えることがとても大切になってきます。

ポイントは「食事」、「運動」、「睡眠」です。

まず、毎朝、太陽の光をゆっくり、しっかり浴びることです。

「光」は体内時計に強い影響を及ぼします。起床後、すぐに窓をあけて、太陽の光を浴びることで、体内時計が補正されます。曇りや雨に日には、明るい蛍光灯でも効果的です。

反対に、夜に強い光を浴びると、体内時計の針は逆に1時間遅れてしまうこになります。夜に強い光を浴びることが習慣化してしまうと、生体リズムはどんどんずれていって、原因不明の体調悪化を招いてしまいます。

そのため、夜の光は禁物です。特に蛍光灯やLED照明のような青色を含む光が悪さをします。また、寝る前の1時間前はPCやモバイルの画面は見ないようにしたいものです。

また、夜のメラトニン分泌を活性化させることです。

メラトニン分泌が活発になると、良質な卵が育ちやすくなるとの研究報告もありますから、直接的な効果が期待できるかもしれません。

メラトニン分泌を活性化させるため工夫は3つあります。
1)日中にできるだけたくさんの光を浴びておく

2)十分な運動をしておく

3)メラトニンを補充する

最後に、朝食、それも、パンとジュースとか、サラダだけというような簡単なものではなく、良質のたんぱく質を含んだバランスのとれた、しっかりした内容の朝食を食べることです。

たんぱく質と糖質を含んだ朝食が体内時計のリセットを促すことがわかっているからです。

以上が基本です。

さらに、生体リズムを整える生活習慣を挙げます。
◎早寝早起き(毎日同じ時刻に。特に、起床時刻)

◎朝のウォーキング

◎時々、時計を見る

体内時計を毎日丁寧に合わせ、生体リズムを整えることは、何も特別なことをする必要はありません。あたりまえなことを、あたりまえに、あえて言えば、あたりまえ度を高めることです。

文献)
1)Hum Reprod. 2023; 38: 1714

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
-----------------------------------------------------------------------
東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

自然のサイクルに同時させることは、心身の健康状態にも良好な影響を及ぼすはずです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1085
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,535部
・まぐまぐ: 2,036部
・合計部数: 3,571部(4月14日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。