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VOL.787 男性のアルコールの影響は?

2018年07月22日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.788 2018/7/22
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説:男性のアルコールの影響は?
・お知らせ:NHKスペシャル「ニッポン"精子力"クライシス」放映
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2018年7月21日 最新ニュース
ART患者の男性パートナーのアルコール摂取と精液所見
http://www.akanbou.com/news/news.2018072101.html
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2018年7月18日 曇り時々雨、のち晴れますように
ラジオ出演しました
http://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20180718.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


最新ニュース解説 Jul.2018__________________________________________

 男性のアルコールの影響は?
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パートナーが不妊治療を受けている男性にとって、適度な量のアルコール摂取は精液検査結果によい影響を及ぼすかもしれないことがイタリアで実施された研究(1)で明らかになりました。

妊活中の男性にとって、タバコは禁煙すべきことはよく知られていますが、アルコールについては、どうなのでしょうか?

今回の研究結果から言えるのは、「適量の飲酒はよい影響を及ぼすかもしれない」というものでした。

◎どんな研究だったのか

ミラノの不妊治療クリニックで、パートナーがART治療を受けるために精液検査を受けた男性323名を対象にアルコール摂取量と精液検査結果の関係を調べています。

過去1年間、週あたりのアルコールの摂取頻度と1回あたりの摂取量につい質問票で回答してもらい、週あたりの摂取アルコール単位を算出しました。

アルコールの1単位の基準は国によって異なります。

イタリアではアルコール1単位はエチルアルコール12.5gにあたるもので、ワインでは125mL、ビールで330mL、蒸留酒で30mLです。

因みに日本では1単位はエチルアルコール20gで、ビールで500mL、ワインで180mLとイタリアよりも多くなります。

◎どんな結果だったのか

週あたりの飲酒量で4つのグループに分けたところ結果、それぞれのカテゴリーの人数(割合)と中央値は以下の通りでした。

1)飲まないグループ   全くお酒を飲まない:31名(9.6%)、0
2)少し飲むグループ   週に1から3単位飲む:97名(30%)、2.63
3)中くらい飲むグループ 週に4から7単位飲む:98名(30.3%)、9.58
4)多く飲むグループ   週に8単位以上飲む:97名(30%)、21.21

飲酒量と精液検査結果で統計学的に有意な関連がみられたのは、精液量、精子濃度、総精子量でした。

精液量は、中くらい飲むグループもっとも多く(中央値3mL)、次に多く飲むグループ(同2.6mL)、少し飲むグループ(同2.4mL)、そして、全く飲まないグループがもっとも少ない(同1.8mL)という結果でした。

一方、精子濃度では、全く飲まないグループがもっとも多く(同4200万/mL)、次に多く飲むグループ(同3900万/mL)、週に中くらい飲むグループ(同3100万/mL)、そして、少し飲むグループがもっとも低い(同2450万/mL)という結果で、飲酒量と精子濃度はU字型の傾向を示しました。

ところが、総精子量は週に中くらい飲むグループがもっとも多く(同8790万)、次に全く飲まないグループ(同8540万)、多く飲むグループ(同8400万)、そして、週に少し飲むグループがもっとも少ない(5150万)という結果でした。

要するに、全くお酒を飲まないのはよいわけではなく、むしろ、適度な飲酒はよい影響を及ぼしいる可能性があるというものでした。

◎これまでの研究では

男性のアルコール摂取量と精液検査結果の関係については多くの研究報告がなされていますが、それらの結果は、相反するもので、男性のアルコールは精液検査結果にマイナスの影響を及ぼすというものもあれば、及ぼさないというものもあります。

そもそも、飲酒量については国によって異なり、単純比較できないもので、飲み方やその影響についても個人差が大きいということもあるのかもしれません。

因みに、最も新しいメタアナリシスでは15件の横断研究を統合、解析した結果、毎日の飲酒は精液検査結果にネガティブな相関を示すが、たまに飲酒することは関連しないと報告しています(2)。

また、男性のアルコール摂取とART治療成績との関係を調べた研究報告(3)もなされています。

それによると、アルコール摂取量が多いカップルほど着床率や妊娠率、出産率が有意に高く、男性のアルコール摂取量が最も多かったグループ(≧22g/day)のカップルと最も少なかったグループ(<3g/day)のカップルの出産率は、それぞれ、61%、28%だったというのです。

これまでの研究では、毎日飲むこと、大量に飲むことは、精子に悪いことは言うまでもありませんが、時々、適量のお酒を飲むことは精子にとっても、そして、治療成績にとってもよい影響を及ぼすというものでした。

◎アルコールのメリットとデメリット

今回の論文の筆者は、アルコールには健康にとって、メリットとデメリットがあると言います。

メリットはお酒に含まれるポリフェノールなどの健康成分を摂取することです。たとえは、ワインにはレスベラトロールは豊富で、ホップにはキサントフモールが豊富です。

反対にデメリットはホルモンのバランスに影響し、男性ホルモンを低下させることです。

要するに、デメリットが出ない程度の量で健康な成分を摂取できればよいのではということになります。

◎自分自身の適量を知ること

アルコールについては、アルコールを代謝する働きについて個人差があるため、量だけで一概なことは言えません。

カフェインについての同じことが言えます。

そのため、自分自身の適量を知り、それを守ることが大切です。

少なくとも、妊活に際して男性はタバコだけでなく、お酒も絶対にやめなければいけないということもないようです。


文献)
1)Andrology 18 July 2018. in press
2)Reprod Biomed Online. 2017; 34: 38-47
3)Andrology 2017; 5: 354-361
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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ________________________________________________________________

NHKスペシャル「ニッポン"精子力"クライシス 」が7月28日に放映されます
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7月28日(土)の午後9時からNHKスペシャル「ニッポン "精子力" クライシス」が放映されますのでお知らせします。

テーマは、タイトルの通り、日本人男性の「精子力」の低下について。何年も前から、ヨーロッパではこの20年ほどで精子の数が少なくなっているという研究報告が、たびたび、なされていますが、昨年、この50年間でヨーロッパの男性の精子数は32%も減っているというショッキングな研究報告がなされています。

ところが、日本人については、欧州4か国と比べても最低レベルにあるとの報告がなされていて、実に6人に1人が、WHOの基準値に満たないという報告もあるとのです。また、数だけでなく、質の低下、すなわち、精子DNAの損傷が妊娠させる力を低下させることもわかっています。

まさに、「危機的」な状況と言えるかもしれません。

番組では、ニッポンに広がる"精子危機"の実態に迫り"精子力"低下の要因や、精子力アップの秘訣なども紹介されるとのこと。

獨協医科大学埼玉医療センターの病院長であり、泌尿器科、リプロダクションセンターの教授でいらっしゃる、岡田弘先生が出演されます。いつも私たちをご指導いただしている先生です。男性不妊についての最新の情報が得られるのではないかと思います。

是非、ご覧ください。

※番組ホームページ
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180728


当社製品&サービス________________________________________________

・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 https://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

とんでもなく暑い日が続きますが、体調を崩さないように気をつけたいものです。

冷たいものは、一時は、気持ちよいものですが、胃腸やカラダを冷やすことになってしまい、それが続くと、「冷え」を招いてしまい、血流を滞らせてしまいます。

夏だからこそ、常温か、温かいのものを飲むのが賢明です。

人間の暑さを感知する仕組みって不思議なもので、あたたかいものを食べたり、飲んだりしていると、暑さもやわらいだように感じるようになります。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.788
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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◎発行部数
・自社配信: 1,628部
・まぐまぐ: 2,917部
・合計部数: 4,545部(7月22日現在)
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