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VOL.734 ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(1)

2017年07月09日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.734 2017/7/9
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・トピックス:ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(1)
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2017年7月3日 編集長コラム
なんのためのカラダづくりなのか
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20170703.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


トピックス Jul.2017_________________________________________________

 ヨーロッ生殖医学会ダイジェスト(1)
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7月2日から5日までスイスのジュネーブにて第34回ヨーロッパ生殖医学会が開催されました。学術集会では世界中の生殖医療に携わる研究者や臨床医が集まり、日頃の研究成果が発表されますので、最新の研究動向を知ることができる機会になります。
https://www.eshre2017.eu/

毎年、口頭やポスターで発表された研究内容の要約が公開されるのですが、最近の傾向として、栄養や食事と生殖機能との関連研究が増えていますが、特に、今年はサプリメントや食生活に関する研究が多く発表されていました。
https://www.eshre2017.eu/Programme.aspx

それだけ、妊娠、出産に際して栄養環境を整えることへの関心や必要性が高まっているということなのでしょう。

そこで、今週から何回かに渡って、ピックアップできればと思います。

今回は体外受精や顕微授精の治療開始前のサプリメントの有効性を確かめた3つの研究です。

オメガ3脂肪酸とビタミンDの補充で胚の質が改善できるかもしれないというイギリスのサウザンプトン大学の研究、また、ビタミンD不足女性ではビタミンDのサプリメントで自己免役が整えられ、着床不全や流産のリスクが低くなるかもしれないいう日本の順天堂大学の研究、そして、ART治療に臨む高齢女性はL-カルニチンのサプリメントをとることで成熟卵や良好胚が増えるかもしれないという韓国のウルサン医科大学の研究です。

■オメガ3脂肪酸とビタミンDの補充は胚の質を改善させる(二重盲検無作為化比較対照試験)

魚油に豊富なDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸やビタミンDが妊娠や出産に際して重要が役割担っているので不足しないように気をつけるべきだということは、これまで何どもご紹介してきましたが、イギリスのサウザンプトン大学で二重盲検無作為化比較対照試験が実施されました。

この試験については、開始前の2014年に研究内容についての論文が公表されていましたので、私たちも結果を待ち望んでいましたが、医学誌に掲載される前に学会で先行して発表されたようです。

試験では、111組のカップルをランダムに2つのグループに分け、一方にはDHAとEPAを1gずつとビタミンDを1日に25μgを、もう一方にはプラセボ(偽薬)を、それぞれ、ART治療開始迄の6週間飲んでもらい、グループ間の3日目と5日目の胚のグレードを比較しました。

その結果、採卵数や獲得胚数、胚盤胞到達率、そして、3日目と5日目の胚のグレードでも有意な差はみられませんでしたが、サプリメントグループで体外受精を受けたカップルでは5日目の胚のグレードが有意に高く、4細胞期から5細胞期への発生速度で改善がみられました。また、赤血球中のDHAやEPAの濃度が高いほど3日目や5日目の胚のグレードも有意に高かったことがわかりました。

これらの結果から6週間のサプリメントの補充によって血中のDHAやEPA、ビタミンDレベルが上昇し、胚質にプラスの影響を及ぼすかもしれない、そして、それは精子の質や機能の改善も関与している可能性があると結論づけています。

今回の無作為比較対照試験の結果は、ART治療前からオメガ3脂肪酸とビタミンDのサプリメントを、女性だけでなく、パートナーの男性も一緒に摂取することが大切であることを教えてくれています。

■ビタミンDの補充は着床不全や不育症のリスクを低下させるかもしれない

最近のビタミンDと生殖の関係の研究は目覚ましく、ビタミンDは着床障害や不育症のリスク要因ではないかと多くの専門家の間で考えられるようになりました。

それはビタミンDを補充することで免役が整えられることによるものではないかとされています。Th1とTh2という2つのヘルパーT細胞は相反する働きがあり、Th1は胚を排除しようとし、反対にTh2は受け入れようとします。

それらのバランスがとれていれば、問題なく、着床し、妊娠が継続するのですが、ビタミンDが不足することで、それらのバランスが崩れ、Th1が優勢になると、着床しづらくなったり、流産しやすくなったりします。

順天堂大学の研究チームは、免疫検査を受けた不妊症女性276名を、まずは、ビタミンD欠乏(<20ng/ml)、ビタミンD不足(21-30ng/ml)ビタミンD充足(>30ng/ml)にわけました。

その結果、ビタミンD欠乏は130名(47.1%)、不足は111名(40.2%)、充足が35名(12.7%)と、驚くべきことに、ほとんどの不妊症女性はビタミンDが不足していました。

そして、その次にグループ間の2つのヘルパーT細胞(Th1とTh2)レベルとTh1/Th2比を比較したところ、Th1細胞レベルは、VD欠乏受精では21.0±6.8%、不足女性で21.0±6.7%、充足女性では19.6±5.6%でした。Th2細胞レベルは、それぞれ、2.2±0.8%、2.4±1.2%、2.5±1.2%、そして、Th1/Th2比は、それぞれ、10.5±5.5、10.6±6.0、8.6±4.5でした。VD欠乏グループでは相対的にTh1レベルやTh1/Th2比が低い傾向にあることがわかりました。

つまり、ビタミンDが欠乏している女性では、胚を排除しようとするTh1が優位だったということです。

最後に、VD欠乏の8名の女性に3ヶ月間、1日に25μg(1000IU)のビタミンDのサプリメントを摂取してもらい、摂取前後のTH1、Th2レベルやTh1/Th2比の変化を調べました。

そうすると、VDサプリメントを摂取した欠乏女性では、Th1細胞レベルが摂取前の21.9±6.2%から摂取後には19.6±5.0%に有意な低下がみられましたとのこと。

着床期や妊娠継続には適切なTh1/Th2バランスが重要です。Th1細胞レベルが異常に高くなると胚を拒絶し、着床しづらくなったり、流産のリスクを高めるからです。

今回の試験でビタミンDが不足している女性では異常な自己免役が働いていること、そして、ビタミンDを補充することでそれが改善される可能性があることがわかりました。

何回も胚移植しても妊娠に至らない場合は25(OH)Dを測定し、不足していればビタミンDのサプリメント摂取を検討すべきかもしれません。

■L-カルニチンサプリメント胚は成熟卵や良好胚を増やすかもしれない

高齢で体外受精や顕微授精でなかなか結果が伴わない場合はL-カルニチンのサプリメントを補充するのがよいかもしれません。

韓国のウルサン医科大学の研究チームは、体外受精に臨む高齢女性を対象にL-カルニチンのサプリメント補充が良好胚を増やすかどうか検討するための後ろ向き研究を実施しました。

2015年1月から2016年3月の研究期間中、ART治療前から治療中の60-90日間、L-カルニチンのサプリメントを1日に660mg摂取した53名とサプリメントを摂取しなかった49名女性のART治療成績を比較しました。

その結果、排卵誘発剤の量や期間に違いはなく、採卵数も同等でしたが、成熟卵や受精卵、グレードⅠ、Ⅱの良好胚数はL-カルニチングループのほうが有意に多かったことがわかりました。

そして、顆粒膜細胞のミトコンドリアの活性の目安となるSDHAの発現量もL-カルニチングループで有意に多かったことから、ミトコンドリアの活性化によるものではないかとのこと。

また、臨床妊娠率はカルニチングループのほうが高い傾向がありましたが、有意差ではありませんでした。

研究の質は高くはありませんが、マイナスの影響はありませんので、ARTに臨む高齢女性にとってL-カルニチンのサプリメント補充を検討してもよいかもしれません。

次号に続きます。

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編集後記____________________________________________________________

いよいよ、夏本番、ムシムシして、じめじめする、この季節、どうしても体調を崩してしまいがちです。

特に、水分をたくさん摂るために、水分がたぶついて、胃腸の働きが低下してしまったり、そのうえ、食中毒の起こりやすい時期でもあります。

そこで、お勧めしたいのが「梅干し」で、水分代謝を高めてくれますし、強い殺菌力をもっているそうで、ピロリ菌の感染症を抑え、胃炎を予防してくれることもわかっています。


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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.734
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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