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VOL.697 アメリカ生殖医学会ハイライト

2016年10月23日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.697 2016/10/23
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・今月のトピックス:アメリカ生殖医学会ハイライト
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2016年10月20日 曇り時々雨、のち晴れますように
市民公開講座のお知らせ
http://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20161020.html
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2016年10月17日 曇り時々雨、のち晴れますように
不妊治療と仕事の両立支援
http://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20161017.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


今月のトピックス Oct.2016__________________________________________

 アメリカ生殖医学会ハイライト
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10月15日から19日までソルトレイクシティでアメリカ生殖医学会が開催されました。世界の生殖医療に携わる研究者やドクター、医療従事者が集い、日頃の研究成果が発表されました。

口頭やポスターで発表された内容は全てサイトで公開されていますので、今週は「ライフスタイル」、中でも「食生活」や「ビタミンD」、「睡眠」をテーマとした発表をご紹介します。

━ 食生活

◎果物や野菜中の残留農薬と体外受精治療成績の関係

体外受精を受けている女性では、治療開始前の残留農薬レベルの高い野菜や果物を食べている量と治療成績が反比例する関係にあったとのこと。

ハーバード公衆衛生大学院の研究で、体外受精に臨む300名の女性に食物摂取頻度調査を実施し、米国農務省の農薬データプログラムをもとに果物と野菜の残留農薬レベルを「高レベル」と「中から低レベル」にカテゴリーわけし、それぞれの野菜や果物の摂取量とその後の493周期の体外受精の治療成績との関連を解析しました。

その結果、残留農薬が高レベルの野菜や果物の摂取量が多い女性ほど出産率が低いことがわかりました。

残留農薬が高レベルの野菜や果物の摂取量で4つのグループにわけたところ、治療成績に影響を及ぼす他の因子を調整した後の治療周期あたりの出産率は、それぞれ、46%、47%、41%、30%と、摂取量が増えるほど有意に低くなりました。

一方、残留農薬が中から低レベルの野菜や果物の摂取量と治療成績には関連性はみられませんでした。

このことから、残留農薬が高レベルの野菜や果物の摂取量が増えるほど体外受精の治療成績が低くなる関係にあることがわかりました。

・編集室から

ハーバード大学の研究グループは、野菜や果物の残留農薬レベルと男性の精液所見との関連についても報告しています。
http://www.akanbou.com/news/news.2016050601.html

今回の研究報告をもって、すぐに無農薬や低農薬で栽培された野菜や果物を食べたほうがよい、または、野菜や果物の食べる量を少なくすると受け止めるのは早計で、いや、間違った受け止め方です。

あくまで、相関関係がみられたということで、残留農薬が治療成績を低下するのに働いたことが確かめらたわけではありません。

野菜や果物はビタミンやミネラル、食物繊維、ポリフェノール類などの栄養源です。

大切なことは、同じ種類の野菜や果物に偏らないで、いろいろな種類の野菜や果物を満遍なく食べるということになると思います。

◎清涼飲料水の人工甘味料や砂糖と顕微授精治療成績の関係

清涼飲料水の人工甘味料や砂糖は卵や胚質や顕微授精の治療成績にマイナスの影響を及ぼすとのこと。

ブラジルのFertility Medical Groupの研究グループは、顕微授精に臨む524名の女性に治療開始前にコーヒーや清涼飲料水(ソフトドリンク)などの飲料の摂取習慣について専門家がインタビューし、その後に得た卵子や顕微授精で得た5,548個の胚のグレード、治療成績との関連を解析しました。

その結果、清涼飲料水はレギュラーも、ダイエットも卵子の質にマイナスの影響を及ぼすことがわかりました。特に、ダイエットの清涼飲料水の摂取は2日目胚や3日目胚にもマイナスの影響を及ぼし、着床率や妊娠率が低くなる傾向がありました。

また、ブラックコーヒー(砂糖を入れない)は卵や胚質、治療成績との関連はみられなかったのに対して、砂糖入りのコーヒーは卵子の質にマイナスの影響を及ぼしました。

さらに、人工甘味料入りのコーヒーは卵子の質だけでなく、2日目胚や3日目胚にもマイナスの影響を及ぼし、着床率や妊娠率が低下する傾向にありました。

これらのことから、砂糖や人工甘味料入りの清涼飲料水はレギュラーでも、ダイエットでも、卵子や胚の質、顕微授精の治療成績にマイナスの影響を及ぼすことがわかりました。

・編集室から

清涼飲料水の特徴は、とにかく、想像(見た目やイメージ、印象)以上の量の砂糖が入っているということです。

そのため、清涼飲料水を頻繁に飲むことでインスリン抵抗性を招きやすくなり、糖尿病等の生活習慣病のリスクを高めることが世界的に深刻な問題となっています。

インスリン抵抗性は卵子や胚の質にマイナスの影響を及ぼし、治療成績を低下させることがわかっています。

砂糖入りの清涼飲料水は避けたほうがよいというのはわかりますが、今回の研究ではダイエット飲料や人工甘味料も同様の影響を及ぼすことを確かめています。

食べるものだけでなく、飲むものも大切です。

◎亜鉛と男性の生殖機能

亜鉛摂取量と男性の精液所見は関連しないとのこと。

ハーバード公衆衛生大学院の研究で18-22歳の男性189名を対象に、食物摂取頻度調査票で食事からの栄養素摂取状況を調べ、精液試験や血液検査を実施し、食事やサプリメントからの亜鉛摂取量と精液所見や生殖に関連するホルモンレベルとの関連を解析しました。

その他の影響を及ぼす因子を調整した結果、食事やサプリメントからの亜鉛摂取量は精液検査結果やホルモンレベルと有意な関連性はみられませんでした。

・編集室から

男性の生殖機能に有益な栄養素と言えば「亜鉛」と言われることが多いように思います。ところが、亜鉛レベルと精液所見の関連を確かめた研究報告はあまり見当たりません。

実際のところ、精液所見が基準を下回った場合にサプリメントを摂取するとすれば、CoQ10のような「抗酸化物質」というのが専門医の一致した見解です。

もちろん、精液所見悪化のほとんどは原因不明ですし、また、妊娠、出産に寄与するという観点からは精液所見を改善しさえすればよいというわけではありませんので、抗酸化療法で男性不妊が治療できるわけではありませんが。

亜鉛は亜鉛で、抗酸化酵素をはじめ、さまざまな代謝酵素をサポートする、超重要ミネラルであることは間違いありません。

そのため、不足すると男性の精子をつくる働きが低下してしまうことがわかっています。

問題が、本当にそのレベルまで欠乏しているかどうかということ、また、もしも、そのレベルまで欠乏しているとすれば、亜鉛以外の必須ビタミンやミネラルも欠乏している可能性が高く、そのようなケースでは、亜鉛だけ補充しても十分ではないということです。

このことから、数回の精液所見が悪かった場合、食事内容が貧弱であれば亜鉛補充の前に、食生活を見直すこと、そして、補充するのであれば亜鉛だけでなく、マルチビタミンミネラルですべての微量栄養素を満遍なく補充することが大切です。

━ ビタミンD

◎ビタミンDレベルと妊娠するまでに要した期間の関係

ビタミンDレベルが高いほど妊娠確率が高いとのこと。

エール大学公衆衛生大学院の研究者らは、不妊症でない妊娠希望の30-44歳の474名の女性の1,210の月経サイクルにおけるビタミンDレベル(血中25OHD3濃度)と妊娠率の関連を解析しました。

その結果、平均の血中25(OH)D3は35ng/mlで、不足とされる30ng/ml未満は30%でした。234周期で妊娠に至りました。妊娠確率に影響を及ぼす因子を調整した後、ビタミンDレベルが高いほど妊娠確率が高いことがわかりました。

・編集室から

アメリカ国立小児健康・人間発達研究所(NICHD)の研究です。

ビタミンD レベルと体外受精の治療成績との関連については多くの研究が実施されていますが、不妊症ではないカップルの自然妊娠における妊娠しやすさとの関係について、初めて行われた研究です。妊娠しやすさは、妊娠するまでに要した期間としています。

ビタミンDは生殖機能のさまざまなプロセスで深く関与していることがわかってきています。ただし、ビタミンDは脂溶性のビタミンですが、紫外線を浴びることでコレステロールからもつくられていることから、紫外線をから肌を守る傾向の強い女性の間では不足しやすいことも知られています。

このことから、妊娠、出産を意識しだした女性は、妊娠前からビタミンDを不足しなうようにサプリメントで補充することが推奨されるようになっています。

━ 睡眠

◎睡眠と男性の妊娠力との関係

短すぎる睡眠時間、長すぎる睡眠時間、睡眠障害は、いずれも男性の妊娠させる力を低下させるとのこと。

ボストン大学公衆衛生大学院の研究チームは、妊娠を希望し、子づくりを開始して6ヶ月未満のカップル695組を対象にインタネットによる調査を実施しました。

まず、男性の過去2週間の平均睡眠時間と睡眠障害の頻度を報告してもらいました。次に、女性パートナーに8週間おきに12ヶ月間、妊娠の有無を報告してもらい、男性の睡眠と妊娠しやすさの関連を解析しました。

その結果、男性の睡眠時間と妊娠確率はU字形を示し、短くても、長くても妊娠しにくくなることがわかりました。

8時間の妊娠確率を基準にすると6時間未満で31%低下、6時間で8%増加、7時間で3%低下、9時間以上で49%低下しました。ただし、統計的な有意差があったのは9時間以上のみでした。

・編集室から

そもそも、睡眠の質が悪いと健康によくないことは当たり前なことですが、これまで男性の睡眠と精液所見との関係についての研究はなされていましたが、パートナーの女性の妊娠確率との関連については初めての報告のようです。

性交渉の頻度については調べられていませんが、その他の因子を調整した結果、短くても、長くても妊娠確率が低下することがわかりました。

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イベント&セミナー情報____________________________________________

10月30日 夫婦の困難 どう乗り越える?第2回 流産・死産を乗り越えて(東京)
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10月30日 Fine祭り2016 全国おしゃべり会special in 札幌(札幌)
http://www.akanbou.com/seminar/20161016-4424.html

11月13日 Fine祭り2016 全国おしゃべり会special in 名古屋(名古屋)
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・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
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・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

アメリカ生殖医学会では、今回、ご紹介した以外でも食や栄養、ライフスタイルと生殖機能に関する報告が多数なされていますので、この後もご紹介していきたいと思います。

食にしろ、睡眠にしろ、生活と密着しているというか、生活そのものですので、すべてを妊娠の確率が高くなるように合わせることは難しいものです。

また、あくまで、そのような統計があるというにすぎませんので、全て合わせれば、妊娠できるというわけでもありませんので、その必要もないわけです。

大切なことは、情報として活かしていただければと思います。

食にしろ、ライフスタイルにしろ、「そうしたい」とか、「好き」ということが第一でしょう。それをベースにして、妊娠、出産を控えて、なにをどう改善するのか、やはり、「そうしたいかどうか」が基準になると思うのです。

あくまで、それを決定するための情報になればということです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.697
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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