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VOL.644 精子の質と受精率や流産率の関係

2015年10月18日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.644 2015/10/18
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今週の内容__________________________________________________________

・今月のトピックス:精子の質と受精率や流産率の関係
・当社製品&サービス
・編集後記


今月のトピックス Oct.2015___________________________________________

 精子の質と受精率、流産率との関係
 〜アメリカ生殖医学会学術集会の発表から
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10月17日から21日までボルチモアでアメリカ生殖医学会が開催されています。

一昨年のボストン、昨年のホノルルで開催された際には、「妊娠しやすい食
生活」の原著者であるハーバード大学のチャバロ先生にお目にかかるという
こともあって行ってまいりました。今年は参加出来ませんでしたが、全ての
発表の要約はサイトで見ることができます。

世界の生殖医療の基礎研究者や臨床ドクターが集い、日頃の研究成果が発表
されますので、「最新」かつ「最先端」の情報が得られます。

主な発表は月曜日からですが、既に要約が公開されていますので、栄養と生
殖機能に関連した発表を何回かにわけてご紹介してまいります。

初回は「男性の精子の質の影響」についてです。

1)今回、伝えたいこと
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自然妊娠でも、不妊治療でも、男性の精子の質は受精率や流産率に関係する
ので、精液検査で問題があってもなくても、男性は精子をよい状態に保つよ
うに心がけることが大切。

2)トランス脂肪酸の摂取量と受精率の関係
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ハーバード大学の研究チームは体外受精や顕微授精を受けているカップルの
男性パートナー141名の食事からのトランス脂肪酸の摂取量を調べ、その後
の246周期の治療成績との関連を調べました。

トランス脂肪酸の摂取量で3つのグループにわけたところ、受精率は摂取量
の少ないグループから順に、77%、78%、64%と、摂取量が最も多かった
グループが最も低いことがわかりました。

また、体外受精だけをみると、83%、70%、47%と、その傾向はより明確
です。

トランス脂肪酸が健康や精子の質にマイナスの影響を及ぼすことはよく知ら
れています。マーガリンや菓子パン、ドーナツ、クッキー、フライドポテト、
冷凍食品などに多く含まれています。

要するに、日頃から加工食品やファストフード、そして、あらゆるスナック
菓子などをたくさん食べている男性はトランス脂肪酸もたくさん摂ることに
なるので、精子の質が低くなり、妊娠させる力が低下しているかもしれない
というわけです。

O-271 MALE DIETARY TRANS FAT INTAKE IS INVERSELY ASSOCI- ATED TO
FERTILIZATION RATES.

3)精子濃度や運動率と流産率の関係
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コロラドの生殖医療センターの研究チームは、精子運動率が25%未満で、精
子濃度が1mlあたり1500万未満の男性パートナー111名と精液検査の結果が
正常だった男性パートナー101名の体外受精や顕微授精の治療成績を比較し
ました。

尚、治療は全て着床前診断を実施し、染色体異常のない胚盤胞を凍結し、融
解胚移植後の妊娠率、出産率、流産率を比較しています。

その結果、妊娠率は男性不妊カップルが81.1%、対照群(男性不妊でない)
が77.2%、出産率は、それぞれ、71.2%、76.2%で、いずれも統計学的に意
味のある差はみられませんでした。

ところが、初期流産率は12.2%、1.3%で、男性不妊カップルのほうが高かっ
たことがわかりました。

研究チームは、染色体に異常のない胚盤胞を移植いているにもかかわらず、
男性不妊カップルで流産率が高かったのは、エピジェネティックな影響、す
なわち、胎児の正常な成育を阻害するような遺伝子発現の影響によるもので
はないかと推測しています。

O-174 PREGNANCY LOSS IS SIGNIFCANTLY INCREASED IN MALE FACTOR
OLIGOASTHENOZOOSPERMIA PATIENTS DESPITE THE TRANSFER OF A EUPLOID
BLASTOCYST.

4)精子の質に着目することが大切
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精液検査で調べる精子の数や運動率は、精子が卵子のところにどれだけ到達
できるかの目安です。

大切なのは卵子と出会ってからです。すなわち、受精し、受精卵の分割が進
み、流産しないで出産にまで至るかどうかということですが、それぞれの段
階で精子の質が関わっています。

つまり、精子濃度や運動率よりも、精子の質のほうが、男性の「妊娠させる
力」を、より直接的に反映しているわけです。

精子の質は、頭部に格納された男性の遺伝情報を含むDNAが傷ついていない
かどうかです。

通常、男性の精液検査の結果が基準を下回っている場合は、その程度によっ
て人工授精や体外受精、顕微授精で妊娠を目指すのが一般的です。

これまでは、精子の質がどのように治療成績に影響を及ぼすのかについては
ほとんど、研究が行われていませんでした。

ところが、今回の研究報告では、たとえ、体外受精や顕微授精を受けても、
精子の質が治療成績に影響を及ぼすことが示唆されています。

であれば、たとえ、治療を受ける場合でも、できるだけ精子の質をよくして
おくことが大切になってくるはずです。

5)精子を活性酸素から守る
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精子のDNAが傷つくのは、主に活性酸素のダメージによるものと考えられて
います。

これまで有効性が確かめられている対策は以下の通りです。

◎精液を溜めすぎない
精子は毎日つくられているので、禁欲期間が長くなると古い精子が増え、古
い精子ほどDNAに傷がついている確率が高くなります。そのため、2、3日
に1回は射精し、精液中に新しい精子の割合を高めておくことです。

◎禁煙する
喫煙は活性酸素を増やし、精子に大きなダメージを与えます。喫煙習慣のある
男性は禁煙すべきです。

◎新鮮な野菜や果物をしっかり食べる
新鮮な野菜や果物は抗酸化物質を豊富に含みます。バランスのよい食事を心が
けます。

◎抗酸化サプリメントを摂る
パートナーの男性が抗酸化サプリメントを摂取している女性の体外受精や顕微
授精の妊娠率、出産率はパートナーの男性が摂っていない女性に比べて高いこ
とがわかっています。

このように、男性も精子をよい状態に改善し、保つために心がけ、精子を守る
生活習慣を実行することが大切です。

まさに、二人で取り組むことがより高い妊娠率や出産率につながるというわけ
です。

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当社製品&サービス________________________________________________

・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 http://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/


編集後記____________________________________________________________

100歳を超えて現役で人生を楽しんでいる長寿者のことをセンテナリアン
と呼ぶそうですが、アメリカのセンテナリアン研究でセンテナリアンの条件
は、血圧や血糖値などの身体の健康状態を示す数値よりも人生に起こったさ
まざまなことを、どう受け止めたかのほうが重要であることが分かったとい
います。

つまり、幸福な人生をおくることができるかどうかは、何が起こったのかで
はなく、起こったことをどう受け入れ、どう受け止めるかにかかっていると
いうわけです。

もしも、センテナリアン研究の結果に普遍性があるならば、ふたりの幸せな
人生のカギは、「いつ赤ちゃんを授かったのか」とか、「子どもがいるのか、
いないのか」ということではなく、「その経験をどう受け入れ、その経験か
ら何を得たのか」ということになるのかもしれません。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.644
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします
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理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出
来る限り客観的な視点で、お届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com/
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