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VOL.424 子育ては妊娠する前からはじまっている

2011年07月31日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第424号 2011年7月31日発行

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お子さんを望まれるカップルを応援します。

なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、
悩みを克服するために、"二人で話し合い、考えを整理"して、
"自分たちにふさわしい答えを出す"上でのヒントになるような情報を、
出来る限り客観的な視点で、毎週末、登録頂いた皆さんに配信しています。


━[今週の内容]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼今週の更新情報

▼トピックス(2)
子育ては妊娠する前からはじまっている

▼妊カラ編集室から
不妊体験者向けの講演会とワークショップのお知らせ

▼編集後記


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 今 週 の 更 新 情 報 一 覧
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サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2011年7月29日 最新ニュース
亜鉛は卵の成熟や受精卵から胚への成育に不可欠な役割を担う
http://www.akanbou.com/news/news.2011072901.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


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 ト ピ ッ ク ス (2)
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 子育ては妊娠する前からはじまっている
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なかなか妊娠しないことに悩んだり、不妊治療を受けていると、当然ですが、
"妊娠すること"に、関心や意識が集中するようになります。

そして、つい、"妊娠するためには"どうすればいいのかという思考回路に
なってしまいがちです。

ところが、ちょっと冷静に考えてみると、妊娠というのは、単なる通過点で
あって、到達点でもなんでないことがすぐに分かります。

子どもを授かるという観点から言えば、到達点は健康な子どもを出産するこ
とです。

そこで、今週のトピックスは、健康なお子さんを授かり、産むために、是非
とも知っておいてほしいことをまとめてみました。


━ 満期の低出生体重児が増えている

厚生労働省の人口動態統計をみると、1970年半ば頃から、平均出生体重は、
ずっと減り続けています。

その反対に、2,500g未満で出生する子ども、低出生体重児の割合が年々増加
し続け、全国平均では、10%に近づいていて、都道府県によっては、12%前
後に達するところもあります。

一方で、少子化が進行していますから、低出生体重児の絶対数が増加してい
るということになります。

そして、大きな特徴として、早産よりも、満期(正常な妊娠期間)の低出生
体重児が増えていることです。

要するに、お母さんのお腹の中で適切な期間いたにもかかわらず、小さいま
ま生れてくるお子さんが増えているのです。

主な原因として、妊婦の「やせ」や「低栄養状態」が考えられています。


━ 生活習慣病胎児期起源説

低出生体重児は、単に、"生れた時に小さかった"で済ませることができな
い問題をはらんでいます。

イギリスの疫学者デイビッド・バーカー教授は、約20年前に生活習慣病胎
児期起源説を唱えたのですが、それ以降、多くの研究で検証され、今では、
21世紀最大の学説と言われるようになっています。

それは、出生児の体重が軽い子どもは、出生後、急激に体重が増え、10歳
くらいになるまでには肥満になり、将来、生活習慣病を発症しやすいという
ものです。

そのリスクは、満期の低体重出生児に高いというのです。

バーカー教授は、妊娠前後、特に、妊娠前の母親の不適切な食生活は、妊娠
後の子宮内での胎児の成長の遅れを招き、子どもの将来の健康にまで大きな
影響を及ぼすと言います。

厳密に言うと、子どもの生活習慣病の発症は、母親の妊娠前、妊娠中の栄養
状態と出生後の不適切な生活習慣の相互作用によるというわけです。

まさに、子どもがお腹の中にいる時から、いや、妊娠する前から、養育がス
タートしていると言っても過言ではありません。


━ 低出生体重児はPCOSになりやすい

また、低出生体重児は、子どもの生活習慣病のリスクを高くすることから、
女の子の場合は、出生時の体重が低いと、思春期以降、糖代謝異常によって、
PCOSを発症するリスクが高くなることは十分に考えられることです。

PCOSとは、多嚢胞性卵巣症候群のことで、排卵障害を伴うと不妊の原因にな
り得ます。

そのことを確かめた最新の報告があります。

スペインのバルセロナ大学の最新の研究では、低出生体重児で陰毛の発毛が
早かった女児38名を2つのグループに分けて、一方のグループの女児には
8~12歳まで、もう一方のグループの女児には12歳から1年間だけ、そ
れぞれ、メトフォルミン(糖尿病薬)を飲んでもらったところ、8~12歳
まで薬を飲んだ女児のほうが、12歳から1年間だけ飲んだ女児に比べて、
15歳時点でPCOSに発症する割合が8倍も低かったとのこと(※1)。

低出生体重児は、将来の生活習慣病だけでなく、女の子の場合は、妊娠する
力まで左右するというわけです。


━ 妊娠前や妊娠中の栄養状態

さて、発展途上国ならまだしも、飽食の時代と言われる豊かな現代の日本に
あって、満期の低出生体重児の主因の「母親の低栄養」など、ピンとこない
かもしれません。

ところが、その実態は、妊娠の可能性のある女性や妊婦の栄養状態は決して
よいとは言えないことが分かります。

まずは、「やせ」の問題。

日本人を対象とした調査では、BМIが18.5未満のやせの妊婦は普通の妊婦
に比べて、低出生体重児が3倍になっています(※2)が、厚生労働省の国
民健康・栄養調査では、30歳代の女性のBMIが18.5未満のやせの割合は
14%、浜松医大が実施した1257名の妊娠初期の妊婦を対象とした調査で
は、22.1%だったとのこと。

次に、30代女性の「栄養摂取量」の問題。

厚生労働省の「平成20年国民健康・栄養調査」と「日本人の食事摂取基準
2010年版」から、30代女性の1日の微量栄養素の平均摂取量は、妊娠
の際に必要とされる推奨摂取量をどの程度満たしているのかを調べてみまし
た。

その結果、ビタミンB6、葉酸、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の平
均摂取量は推奨摂取量を下まわっています。

特に、葉酸や鉄は半分以下です。

また、妊婦「栄養摂取」の問題。

浜松医大が実施した245名の妊婦を対象にした食事調査では、妊娠初期の
カルシウムの摂取量は推奨量の61.5%、ビタミンB2では77.5%、葉酸では
49.0%、ビタミンCで61.5%だったとのこと。

鉄は、妊娠初期は146.0%と十分に摂れているものの、妊娠中期では60.0%、
末期では57.8%と大きく不足しています。

生殖年齢にある女性が、いかに、ちゃんと食べていないか、食べられていな
いかが明らかです。

さまざまな理由が考えられますが、ライフスタイルや価値観が多様化し、そ
の結果、自ら食材を選んで調理するよりも、調理済の食品やファーストフー
ド、加工食品を食べる頻度が増えたり、不規則な生活、欠食、間違ったダイ
エット、などなどがあるのかもしれません。


━ 妊娠前から未だ見ぬお子さんの養育環境を意識したい

お子さんの養育環境は、母親の妊娠前の栄養状態からスタートすることが分
かりました。

一方、不妊を経験すること、すなわち、妊娠するまでに時間がかかること、
一般不妊治療(排卵誘発剤の使用)や高度生殖補助医療(体外受精や顕微授
精)を受けることは、お子さんにマイナスの影響を及ぼしはしないかと心配
される方が少なくありません。

ところが、これまでの多くの研究報告をみてみると、一見、不妊治療で生れ
たお子さんのさまざまな健康リスクが高いように見えますが、実際には、排
卵誘発剤の使用や体外受精、顕微授精の治療そのものの影響よりも、母親や
父親の生活習慣や健康状態、社会的経済的な要因の影響が大きいことがわか
ります。

つまり、お子さんの心身の健康に大きな影響を及ぼす養育環境は、母親や父
親によって、どうにかなるところがとっても大きいこと、そして、妊娠する
前から始まっているということに他ならないのです。


━ 未だ見ぬお子さんの健全な成育のために

206年に厚生労働省は「妊産婦のための食生活指針」を作成し、望ましい
食生活を送るための目安を提示しています。

以下から全てダウンロード可能です。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html

ポイントは、適切な体重管理、規則正しく、バランスよく食べるということ
に尽きるかと思います。

また、葉酸は、いくらバランスのよい食生活を心がけても、妊娠前、妊娠中
の必要量を摂取することが困難な栄養素の代表です。

葉酸の不足は、脊椎二分症のような神経管閉鎖障害の発症リスクを高めるだ
けでなく、早産や低出生体重児、胎児発育遅延、さらには、葉酸不足による
母体のホモシステイン濃度の上昇は受精卵の発育不全や習慣性流産、妊娠合
併症のリスクまで高めてしまうことがわかっています。

葉酸は、妊娠前からサプリメントで補充するのが賢明です。


━ 妊娠しやすいカラダづくりはお子さんの健康につながる

妊娠が成立すると、母親の体内では、妊娠を維持し、どんどん発育する胎児
に栄養を補給するために、ホルモンの分泌とエネルギー代謝を大きく変化さ
せます。

このような急激な変化を可能にするのは、妊娠成立前からの栄養状態です。

母親のBMIと栄養状態は次世代の健康に影響を及ぼすのです。

不妊期間を経験することは、無計画で妊娠、出産するよりも、お子さんのた
めの養育環境を整えるための時間が得られることになるという点では有利な
のかもしれません。


---[文献]---------------------------------------------------------

※1)Early Metformin Therapy (Age 8-12 Years) in Girls with
Precocious Pubarche to Reduce Hirsutism, Androgen Excess,
and Oligomenorrhea in Adolescence
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism June 1, 2011

※2)Pregnancy body mass index as an important predictor of perinatal
outcomes in Japanese.
Archiv Gynecol Obstet 2005;271(4):311-315

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記事への感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


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 妊 カ ラ 編 集 室 か ら
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今週は、不妊当事者を支援する自主グループ「TEAMラ・ポルタ」が開催する
イベントのお知らせです。

「不妊のきもち ==どう向き合う?私のこころ== 」というタイトルで、講演
とワークショップがあります。

8月28日の日曜日、東京渋谷区の渋谷区の文化センター「アイリス」にて、
開催される予定です。

以下に詳細をお知らせします。

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  不妊体験者向けの講演会とワークショップ
  不妊のきもち ~どう向き合う?私のこころ~
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不妊当事者は、時に、さまざまな感情を抱えます。そしてその感情を不安に
思うことがあります。そんな感情やこころとどう向き合ったらいのでしょう。

今回は、小倉智子先生(臨床心理士)をお迎えし、感情やこころとの向き合
い方をテーマに、講演会と不妊体験者向けのワークショップを企画していま
す。

不妊生活の緊張を取るための知恵を、一緒に考えてみませんか。

■開催日:8月28日(日)
■時 間:13:30-16:30
■場 所:女性センター・アイリス 渋谷駅徒歩5分

■内 容:臨床心理士小倉智子先生による

◆第1部 講演会 13:35-14:20
     『不妊の自己嫌悪と自己否定』

◆第2部 ワークショップ 14:30-16:00
     『自己嫌悪、自己否定を和らげるためのエキササイズ』

■参加費:1000円
※講演会、ワークショップ、どちらかだけの参加も可能。料金は同じです。

■参加対象:
 講演会⇒不妊について学びを深めたい方ならどなたでも。
 ワークショップ⇒不妊当事者

■お申込み:
 下記項目をご記入の上、メール(携帯メール可)にてお申し込みください。
 1)名前(ハンドルネーム可) 
 2)第2部への参加希望の有無
 ※参加希望の方は以下についてもお知らせください。
 ◇性別 
 ◇治療段階(例:タイミング指導)
 ◇今、困っていること、つらいこと

★メールのタイトル(件名)を「アイリス企画申込」とし、お送りください。
 team-laporta@peer-net9.jp

★受付確認について
 お申込み後、3日以内に受付確認し、返信します。

※お申し込み個人情報の取扱いについて
 申込時に提供された個人情報は、本事業の実施にのみ利用し、そのほかの
 目的で利用することはありません。企画終了後、適切に破棄をいたします。

★TEAM・ラポルタのサイト
http://www.peer-net9.jp/index.html

★このイベントの詳細ページ
http://www.peer-net9.jp/2011_iris.html

この企画および、TEAMラ・ポルタの活動に関するお問い合わせは、メールに
てお願いします。

宛て宛:team-laporta★peer-net9.jp(★を@に変えてください。)
アイリスプロジェクト担当:岩永(いわなが)、西山(にしやま)


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▼不妊に悩む夫婦の自己決定を支援する情報サイト
→「妊娠しやすいカラダづくり」
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▼妊カラ・男性不妊編
→「男性不妊 ~ ふたりで知っておきたいオトコのこと」
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 編 集 後 記
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適正なBMIを維持することやバランスのよい食生活を心掛けることは、ま
ずは、妊娠するためにもとても大切なことです。

読者のみなさんは、既に、お気づきのことと思います。

質の良い卵子や精子を育むこと、受精卵が健全に成育すること、胚がしっか
りと子宮にくっつくこと、そして、胎児が子宮内で順調に育つこと、これら
は、全て連続したプロセスであって、どこかで区切れるものではありません。

ですから、どこかのプロセスで、排卵誘発剤や高度な生殖補助医療の助けが
あっても、なくても、このプロセスを進めるのは、母親になる女性と父親に
なる男性のカラダの働き、そのものなのです。

そして、そのパフォーマンスを高めるのも、低くするのも、私たちに出来る
ことは、決して、少なくありませんし、その力も弱いものではありません。

また、お子さんの将来に渡る健康という観点から言えば、成人からどんな生
活を送ろうと、子どもが自己責任で決定することです。

ところが、お腹の中にいるときの栄養環境は、子どもが親を選択することが
できないように、子どもには何の選択権もありません。

言えることは、いずれも、妊娠してからでは遅すぎるということです。


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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.424
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数
・自社配信: 201部
・まぐまぐ:5,107部
・合計部数:5,308部(7月31日現在)
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