ドクターにインタビュー

vol.17

【2】 不妊症を生殖器官ではなく、もっと全人的にみる必要がある

ジョージ・チャヴァロ 先生(ハーバード公衆衛生大学院准教授)

ジョージ・チャヴァロ

【2】 不妊症を生殖器官ではなく、もっと全人的にみる必要がある

細川)
日本は高度生殖補助医療の治療周期数が世界で最も多い不妊治療大国です。ところが、治療あたりの妊娠率は世界の最低レベルです。患者さんの高齢化がその主な原因であると言われています。
Dr.)
世界で最も大きな不妊治療クリニックが東京にあることは知っています。また、そのことが日本の大きな問題であることも認識しています。
細川)
生殖医療だけでは全ての問題を解決できません。
Dr.)
全く同感です。私たちは不妊症を生殖器官だけではなく、もっと全人的に見る必要があると考えています。もちろん、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療によってでしか解決できない問題は常にあります。ところが、特に高齢による卵巣機能の低下が不妊症の原因の多くを占める日本をはじめとする先進国では、単に高度生殖医療のような医学的な介入以外の対策を実施する必要があります。
細川)
はい。
Dr.)
たとえば、アメリカ合衆国では、年におおよそ15万周期の生殖補助医療が行われています。ところが、人口比率で推計すると生殖医療で問題が解決できる女性はその10倍はいると考えられます。だからと言って、現在の10倍の不妊治療医を教育し、養成することは間違いなく困難です。ですから、私たちは不妊症を治療することだけでなく、予防したり、悪化するのを防いだりする方法を考え、実践する必要があるわけです。
細川)
よくわかります。
Dr.)
そして、不妊症の予防や治療において、食生活やライフスタイルを見直し、栄養環境を整えることは自分たちで取り組むことができ、かつ、効果的な方法です。
細川)
はい。ただし、世間では「妊娠しやすいカラダづくり」に関する情報が氾濫しています。その中には間違ったもの、いい加減なものも少なくありません。そのため、私たちはこれまで科学的な根拠に基づいた情報を提供したいとの方針のもと、ハーバード大学のチャヴァロ先生のグループの研究報告の知見をベースにコンテンツを作成してきました。もちろん、今回の翻訳出版はその一環です。
Dr.)
ありがとうございます。確かに食生活の妊娠する力への影響についての信頼できる情報は限られています。全くその通りだと思います。私たち、ハーバード大学の研究チームは「看護師健康調査」のデータを使って多くの学術論文の発表、そして、「The Fertility Diet」の出版を通して、はじめて食生活と排卵障害のリスクとの関連を示しました。

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