ドクターにインタビュー

vol.15

オーダーメイドの不妊治療とは? ~ あるべき不妊治療を考える

安部 裕司 先生(CMポートクリニック院長)

安部 裕司

【4】不要な治療を回避ための「レスキューICSI」

細川)
身体や心、そして、経済的にも負担をかけずに出来るだけ早く妊娠を目指すという方針のもとに行われている治療として、他にどのようなものがあるのでしょうか?
Dr)
レスキューICSIですね。当院では、体外受精を行う際、重度の男性不妊の患者さんでない限り、なるべく自然に近い方法で受精させるために精子を卵子に振りかける方法を行っています。
細川)
重度の男性不妊患者さんでなければ、最初からICSI(顕微授精)、すなわち、顕微鏡で観察しつつ、卵子に精子を直接注入する方法は採用しないということですね。
Dr)
そうです。ICSIは1992年に始まった、比較的、新しい治療法であり、出生児への安全性については通常の体外受精と変わらないという報告もありますが、その一方で、染色体異常あるいは外表奇形が少し増える傾向にあるといった報告もみられます。要するに、まだ一定の見解は出ていないのが実状なわけです。そのため、不必要なICSIを避けるための治療がレスキューICSIなのです。
細川)
具体的にはどのような治療方法なのでしょうか?
Dr)
体外受精を行った全ての卵を媒精5~7時間後に観察し、精子の進入が確認できなければ、顕微授精(レスキューICSI)を施行しています。この方法により、突然で、予測できない受精障害に対処するわけです。
細川)
レスキューICSIと通常のICSIでは受精率などの成績に違いはないのでしょうか?
Dr)
体外受精後の卵の観察をきちんと行うことで、より正確にレスキューICSIを施行することが出来、レスキューICSIは通常のICSIと優位差の少ない成績を得ています。
細川)
なるほど。
Dr)
レスキューICSIは予測の困難な受精障害に有効であると考えています。
細川)
不要な顕微授精(ICSI)を避けることで、お子さんへの未知のリスクをも回避できるというわけですね。
Dr)
そういうことです。最近の風潮としては、患者さんが高齢化していることもあって、体外受精よりも、顕微授精のほうが治療数が多くなっている現実があります。受精障害や重度の男性不妊の患者さんがそれだけいるということではなく、保険的な顕微授精が多く行われているということに他なりません。
細川)
そうですね。

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