ドクターにインタビュー

vol.09

ストレスフリーの不妊治療を目指して 〜不妊治療を経験した女医だからこそ、わかること、言えること、できること

田村秀子 先生(田村秀子婦人科医院院長)

田村秀子

【2】世間の言葉に惑わされない

★年齢や治療のことをどのように受け止めればいいのか

細川)
妊娠するための生活か、ふたりの生活を楽しんだ結果の妊娠なのか、 その違いは大きいですね。
Dr.)
たとえば、皆さんご承知の通り、 女性の妊孕性(妊娠する力)は年齢とともに低下する宿命にあります。 確かに、一般的には30代後半ともなれば周期あたりの妊娠率の低下は それまでと比べて拍車がかかるとされてはいます。 ただ、『もう38歳』なのか、『まだ38歳』なのか、この受け止め方の違いも大きいですね。
細川)
プラス面をみるか、マイナス面をみるか、正反対のとらえ方ですね。
Dr.)
どうとらえようと、38歳は38歳なのですから、 自分に都合よく受け止めればいいのです。 女性の年齢に関係なく、不妊の女性のココロの中には"焦り"が少なからずあります。 そこに"もう38歳"なんて思うと、不要な焦りを大きくしてしまい、 そのストレスが卵管や卵巣を緊張させてしまうと、 かえって妊娠しづらくなってしまわないとも限りません。
細川)
本末転倒的です。
Dr.)
反対に、若くても、"若いのに"ととらえると、その後に"なぜ妊娠できないんだろう"と、 自分を責めてしまうことになります。これもストレスを大きくしてしまいますね。
細川)
"若さ"もとらえ方次第だということですね。
Dr.)
"若いのに妊娠できない"のではなく、 "若いからいろいろな妊娠のためのチャレンジが出来るのだ"と受け止めて欲しいですね。
細川)
なるほど。
Dr.)
不妊治療についても同じようなところがあります。 世間では、負担の軽い治療からはじめて、それでも妊娠しなかったら、 徐々に強い治療に移っていく治療方針のことを「ステップアップ治療」と呼ばれています。 ステップアップの適切な時期についてはいろいろな目安がありますが、 あくまでも、それぞれの患者にふさわしいタイミングがあるはずです。 ところが、自分の状態ではなく、世間の目安を基準にしてしまうと、 不必要な治療を受けることになってしまったり、 反対に有効な治療の機会を逸したりしてしまいかねません。
細川)
ステップアップ治療という治療法やルールがあるように受け止めてしまうわけですね。
Dr.)
そうかもしれません。 また、不妊治療、特に、体外受精は身体に負担がかかるというイメージがあって、 過度に心配される患者さんがいます。
細川)
確かにそういうイメージがあります。
Dr.)
ところが、実際に、お産のほうが、余程、身体にかかる負担が大きいのですよ。 負担が大きいか、小さいかというとらえ方ではなく、 自分に必要な治療かどうかで判断するべきでしょう。
細川)
そうですね。身体に負担が大きいというイメージもストレスにつながる可能性が大きいですね。
Dr.)
世間の言葉に惑わされてしまってはいけません。世間の無理解や誤解に負けてはいけないのです。

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