ドクターにインタビュー

vol.09

ストレスフリーの不妊治療を目指して 〜不妊治療を経験した女医だからこそ、わかること、言えること、できること

田村秀子 先生(田村秀子婦人科医院院長)

田村秀子

【1】自分たちのライフスタイルを大切にしながら

★不妊治療をはじめるにあたって知っておいて欲しいこと

細川)
不妊治療を受けるようになって気持ちのアップダウンが大きなストレスになっているとの悩みが多く寄せられます。
Dr.)
治療を受けるようになると誰しも妊娠への期待が高まるものです。でも、適切な治療を受けたとしてもすぐに妊娠できるとは限りませんからね。期待が大きくなった分、妊娠できなかったときの落胆も大きくなりますから、気持ちのアップダウンに悩まされてしまうのは、ある意味、仕方のないことなのです。
細川)
そうですね。
Dr.)
だからと言って、ストレスが大きくなってしまうと、妊娠にマイナスの影響を及ぼしてしまわないとも限りません。ですから、治療を始めるにあたっては過度に期待し過ぎない意味でも、"生理はやってくるもの"というくらいの感覚が大切でしょうね。
細川)
過度の期待は禁物だと。
Dr.)
女性の一生のうちで、来るはずの生理が来ないのは、妊娠するときのせいぜい2~4回くらいのものです。それが治療を始めてすぐの「今」でなくてもいいじゃないですか? もちろん、妊娠を期待するなというわけではありません。ただ、そんなに焦らないで、まずは、生理は来るものと思って治療をはじめてみればいかがでしょうか?
細川)
焦らずにたんたんと取り組んだほうがよいということですね。
Dr.)
そうです。 きちんと生理がきたということは、生殖機能が正常に働いているということでもあるわけですから 自分の卵巣を誉めてあげましょう。
細川)
"責める"のではなく、"誉めてあげよう"と。
Dr.)
はい。あと、不妊治療が辛くなるもう一つの理由に 達成感が持ちにくいということもあります。
細川)
妊娠するか、しないかですからね。
Dr.)
その通りです。 ですから、その前に、たとえば、ホルモンが整ってきたとか、 子宮内膜の状態がよくなってきたとか、おりものがよくなってきたとか、 とにかく、よいところを見るのです。 そうして、一歩ずつ階段を上がっているという感覚をもつことが出来れば、 ずいぶんと気持ちの持ち方も変わって、 肩の力が抜けてくるようになると思いますよ
細川)
高いところばかりを見ているのではなく、 目先の目標をクリアしていくと励みになるというわけですね。
Dr.)
もちろん、皆さん、赤ちゃんが欲しいからこそ、妊娠したいからこそ、不妊治療を受けるのですが、 妊娠を真正面にすえてしまうと気持ちにゆとりがなくなってしまって、かえってよくないのですね。
細川)
妊娠を真正面にすえてしまう?
Dr.)
そうです。 ともすれば治療を最優先して、治療のための生活になってしまうわけです。 でも、あくまでも"ふたりの生活ありき"でしょう? たとえば、治療スケジュールでも"治療ありき"ではなく、 まずは、自分たちの趣味や旅行の日程を組んでから、 それにあわせて治療スケジュールを立てるようにドクターに要求するくらいのスタンスでいいのかもしれません。
細川)
生活を治療にあわせるのではなく、生活にあわせた治療だと。
Dr.)
そういうことですね。妊娠はちょっと横に置いておく感じで、クールにね。 まずは、自分たちのライフスタイルを大切にして、 そして、治療がある、 その結果、いつのまにか授かっていたという感じでしょうか。 実際に、そんなカップルのほうが早く妊娠する傾向があるようです。
細川)
なるほど。
Dr.)
不妊治療は辛いだけの経験では決してないのですね。 とらえ方、取り組み方次第では、ふたりが本当に望む暮らし方や生活環境について、 考え直したり、デザインしたりする機会にできると思うのです。

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