編集長コラム

細川 忠宏

二人の世界観をもつということ

2008年10月19日

読者の方々から、私たちにところへ、ほぼ毎日、何かしらのメールをいただきます。

きっかけは、サイトのQ&Aや妊娠報告のフォームから、また、メルマガの記事についてのご意見やご感想、ご要望など、そして、毎週土曜日に開催している、ファーティリティレッスンを受講されている方や修了された方からと、メールの送り主は、見知らぬ方から、既に何年もお付き合いのある方まで、そして、内容的には、不妊についての一般論的なアドバイスを求められるものから、相当に、個別的、かつ、深く、難しい内容のものまで、それは、もうさまざまです。

私たちは、医療機関でも、また、お役所でも、大きな組織でもありませんし、皆さんとは、抜き差しならない人間関係がないからか、気安く、お話ししてもらいやすいポジションにあるのかもしれません。

そんな私たちの経験から、確かに言えることは、本当に、それぞれの夫婦には、それぞれの授かり方、それぞれの授かるタイミングがあるということです。

どんな因果の法則のもとに、赤ちゃんがやってくるのか、まったく、一概には言えないなと、つくづく、思うわけです。

これ(授かるためにいいとされていること)をして、そして、あれもしたからと言って、必ずしも、授かるわけではないし、反対に、あんな(授かるためにはマイナスな)ことをしたにもかかわらず、授かることもあるということ。

たとえば、不妊の原因と診断されたところをしっかり治療したあとも、なかなか授からない、或いは、徹底的に、精密な検査を繰り返しても、どこも異常がないのに、長期間授からないことが、往々にしてあったり、反対に、まったく期待していなかった周期に、あっけなく授かったり、現実には、そんなことが普通に起こっているということです。

これこれ、これだけの不妊の原因があって・・・、また、この治療を何回受けたら、この治療にチャレンジして・・・、なかなか授からなければ(不妊症と診断されれば)、あたかも、進むべき道、乗っかるべきレールがあるかのように思ってしまいます。

でも、それは、あくまでも、話しを分かりやすくするためであって、決して、その道やレールしかないわけではないのですね。

それは、あくまで、"一つの世界観"にしか過ぎないわけです。

もしも、今、そんな世界観ゆえに、辛い思いをしている方がいらっしゃったら、ちょっと、カメラのレンズを思いっきり引くようにして、自分たちのこれまでのことを客観的にみてみると、違った風景の世界が見えてくるかもしれません。

たぶん、授かるための条件って、あるのだと思います。

でも、その条件って、私たちが知っていること、知らないこと、また、分かっていること、分かっていないこと、そして、私たちにコントロールできること、出来ないことを含めて、複数あると思うのですね。

そう考えないと、現実に起こっていることを論理的に説明できません。

自分たちの努力や頑張りだけでは、或いは、現代の先端医学をもってしても、それらの条件を揃えることが困難なこともあるということは、確かなに、悲しいこと、情けないことと思いがちですが、それは、別の観点からみれば、だからこそ、生きるということのかけがえのなさに、実感として、気づくかされるきっかけにもなるかもしれません。

くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、だからと言って、頑張っても無駄だとか、不妊治療は期待できないと言いたいわけでは、決して、ありません。

決まった授かり方、授かるタイミングなどないんだということを、ただただ、知ってもらいたいだけです。

そして、どんな授かり方をしようと、どんなタイミングで授かろうと、はたまた、授かれることができるのか、できないのかということを、自分たちがどんな世界観でもって受け止めるのか、そのことのほうが、余程、大切なことなのではないでしょうか?

最後に、今朝、思いもかけず、いただいたメールをご紹介させていただいて、このコラムを終わることにします。

Kさんは、かれこれ、4年前ほどに、私たちの気功教室にこられてからのお付き合いです。

不妊治療を受けておられた時期もあったり、鍼灸治療に通われた時期もおありだったようで、そういう意味では、いろいろ、紆余曲折あったと言えるかもしれません。

---[Kさんからのメールここから]-------------------------------------

<中略>

細川さんにご連絡しようと気になっていたのですが、実はあの後に子供を授かり、今月の終わりで妊娠4ヶ月を迎えます。

子供をあきらめていた訳はもちろんないのですが、子供を授かることだけに気持ちが集中しなくなってはいたので、こういうタイミングで授かったことに自分自身ちょっと驚きました。

でも、他の方の体験談などにもあるように、きっと子供が自分が世の中に出るベストなタイミングだと思い、こうして今私たち夫婦のもとに来てくれてのだと思い、本当にうれしく、何よりも大切にしていこうと強く思っています。
?
<中略>

気功教室からファーティリティレッスンまで受講し、気功だけでなく、腹式呼吸や瞑想などのリラックスできる方法教えていただき、自分の心身を見つめ直す良い機会を得られたことに感謝しています。

それが、自分の気持ちに変化をもたらし、結果的に良い結果を得られたのと思います。

本当にありがとうございます。

つわりも大分治まってきたところなので、5ヶ月目に入ったら、無理のない程度に自宅で気功をやりたいと思っています。

---[Kさんからのメールここまで]-------------------------------------

"子供が自分が世の中に出るベストなタイミング"と、"自分たち(夫婦)が子供を欲しいと思うタイミング"は、時として、ずいぶん、かけ離れることもある、でも、そのことで、大切なものを得られたということでしょうか。

Kさん、おめでとうございます!そして、ありがとうございました!