◆よくある“奇跡”
一昨日、ある方からメールで妊娠の報告を頂きました。
不妊期間が8年で、 その間、受けた治療はAIHが9回、IVFが5回ということなのですが、
なんと!、自然妊娠されたというのです。
治療を休憩していた間のことだったそうで、
主治医の先生も「奇跡的だ」と、
喜びながらも複雑な表情で首をひねっておられたそうです。
高度な治療を受けても妊娠しなかったのに、
ひょこっと、自然妊娠するという、 そんな、“奇跡的な妊娠”は、実は、よくあります。
或いは、子供が出来ないのだけれども、
諸処の事情から不妊治療を受けずに、
結婚後10年目に、突然、妊娠するなんてことも、やはり、あります。
生命の神秘さ、偉大さを実感する時でもありますが、
とにかく、“奇跡”は、よく起こります。
くれぐれも誤解しないで頂きたいのは、
高度な治療を受けても妊娠しなくても、必ず、自然妊娠出来るとか、
治療を受けなくても、 いつか、必ず、自然妊娠出来ると言っている訳ではありません。
生命の誕生に際しては、 予想外のことが起こることがあるということです。
もしかしたら、“奇跡的”とは言えない頻度かもしれません。
◆妊娠を妨げる要因の多様性と複合性
今年の5月に「Biology of Reproduction」という生殖医療専門誌に、
興味深い記事が掲載されました。
それは、ハムスターの実験で、
タバコが、卵管が卵子や受精卵を運ぶ力を低下させ、
受精や妊娠が起こりにくくさせることが判明したというのです。
興味を引いたのは、タバコの害もさることながら、
妊娠を妨げる要因は本当に色々ある、ということでした。
普通、卵管因子と言えば、
性感染症や子宮内膜症なんかで癒着や炎症がおこって、
卵管が閉塞したり、通過性が低下してしまうことをイメージしますが、
そんなケースだけではないようです。
排卵された卵子や受精卵は、自力で移動するわけではなくて、
卵管の内側の“繊毛”という毛のような組織によって、運ばれるそうなのですが、
この繊毛の動きに支障がおきると卵管の通過性に問題がなくても、
卵子や受精卵が移動出来なくなって、受精や妊娠が妨げられ、
不妊の原因になるというのです。
このような卵管の内側で起こっていることは、
通常の検査では発見しようがありません。
今さらながら、不妊原因の多様性と複合性を実感させられるものです。
◆不妊症を正確に把握することが難しいのは・・・
さて、いわゆる“奇跡的”としか言いようのない、
予想外の妊娠が起こり得るのは、 あくまで、推測ですが、
不妊の原因がいろいろ複数あって、
かつ、それらは固定的ではなく、
その時々で、異なるからではないでしょうか?
そのように考えないと、到底、説明がつきません。
イメージ的にはこうです。
妊娠が成立するためには、
さまざまな条件が全てクリアする必要があるのですが、
それは、それぞれの条件のスイッチが全て“オン”になった時です。
ところが、その中のスイッチが、
1つでも“オフ”になると妊娠は成立しません。
そして、オフになるスイッチは1つではなく、
また、常に同じスイッチがオフになっているわけでもなく、
オフになるスイッチは、時として、変わるのです。
さらに、どうなれば、オンになって、
どうすれば、オフになるのか、
明確な目安がなく、たまたま、オンになったり、
たまたま、オフになったりすることがあるのかもしれません。
◆不妊治療特有の悩ましさ・・・
いかがでしょうか?
不妊検査の精度がいい加減であると言いたいわけではありません。
人間のカラダには“曖昧な面”があるということを知って欲しいのです。
予想外の妊娠が起こることだけでなく、
不妊治療の成功率の低さ、
どうしても不妊治療が長引いてしまうことがあること、
そして、不妊症を正確に理解し、的確な対策を講じることが、
案外、難しい場合があることも、
多少は理解しやすくなるのではないでしょうか。
不妊の原因を追求し過ぎると、
時として、ストレスを溜めてしまうだけに終わることもあるでしょう。
もちろん、全ての不妊症がこのように複雑で、
分かりづらいものではありません。
もしも、あなたが、不妊期間が長引いていて、
何周期も結果が伴わない治療に、どうにもくじけそう・・・、
そんな状態なのであれば、
少しは、頭を整理し、
前を向けるきっかけになればとう願いを込めて、
書いてみました。
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