編集長コラム

細川 忠宏

キーワードは、"気持ち良い"

2004年04月14日

4月13日、日本産婦人科学会で発表された東海大学の研究について、とても興味深い内容だったのでご紹介したいと思います。

グループの心理療法が効果的

それは、不妊治療期間中に同じ悩みを持った女性同士が集まり、悩みを語り合うことによって治療の成功率が高まることが判明した、 というものです。

これは、東海大学病院で、6ヶ月以上不妊治療を受けている女性74人を対象にした研究結果で、平均年齢は、34歳、不妊治療をはじめてからの期間は平均で約6年とのことですから、重度の不妊症のグループであると言えます。
半分の37人を約10人のグループに分け、週1回90分の会合を5週間開き、悩みを語り合ったり、受精卵が着床するイメージを思い浮かべたりしました。

もう一方の37人はこうした心理療法は施しませんでした。

全員、通常の不妊治療を受けながら実施されました。

その結果、心理療法を受けた37人の内、14人が妊娠したのに対して、受けなかった37人のほうは、5人の妊娠に止まっています。

なんと、週1回集まったグループのほうが、なにもしなかったグループに比べて3倍近く妊娠出来ているのです。
両グループの条件はほぼ同じに設定された研究ですから、明らかに心理的な要素が治療の成功率を左右したと言えます。

不妊改善において、 精神面、心理面の影響については度々指摘されるところです。
ところが、このような研究によってグループの心理療法の有効性が確認されたのは、おそらく国内では初めてのことではないでしょうか。

不妊症における心理的要素をどう考える?

研究を実施して日本産婦人科学会で発表した東海大学の松林秀彦講師は、「同じ悩みを持った女性同士が集まり、心の支えになった。不妊症の原因には心理的な要素が占める割合が大きい」と話されています。

この先生が指摘されている、『不妊症の原因には心理的な要素が占める割合が大きい』ということについて考えてみます。

まずは、なかなか妊娠することが出来ないことの"原因"として、始めから心理的な要素があったのでしょうか。

どうなんでしょうか?

私は違うと思うのですが・・・。
もちろん、仕事などで強いストレスを感じ、それがもとでなかなか妊娠しづらくなった、 ということもあるかも知れません。

それよりも、これまでのさまざまなお声をお伺いしてきた経験から言えば、なかなか妊娠することが出来ない"結果"として、ストレスや焦り、不安感が徐々に、あくまでも少しずつ、大きくなり、気がつくと、そんな心理的な要素がより妊娠しづらくしていた、というところが実際のところではないかと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。

やはり、最初は、「肉体的な要素ありき」、ではないかと思うのです。子供をつくろうとすれば、 直ぐに妊娠するはず、というイメージが、どうも時間が経つにつれて、 少しずつ崩れていき、少しずつ、なぜ出来ないのかな、 おかしいな、と。徐々に、こんなはずじゃなかった式に、 "不妊"を自覚していくのではないでしょうか。そして、それと供に、不安感や焦りが次第に大きくなっていくのでは ないでしょうか。

ですから、治療の必要性を感じ、病院に通う頃には既に相当なストレスを感じているはずなのです。

さらに、 さらにですよ、その上に不妊治療を受ける訳です。
日常では、大切に仕舞っていること、想いが、病院ではなんの恥ずかし気もなく白日のもとに扱われるだけでも大変なことなのに、これも妊娠のためと感情を殺して臨まざるを得ない辛さ、

また、副作用を心配しながらも、これも妊娠のためと薬を飲み、注射されることに耐え続けるのです。

果たして、これだけ頑張ったのだからと期待するのは当然の人情で、そんな中で生理を迎える度に落ち込むのも無理のないことです。

このように不妊治療はストレスになって当たり前なのです。
ステップアップするのは治療内容だけではありません。受けるストレスのレベルもステップアップしていく訳です。
真面目な人ほどこの傾向が強くなるようです。

肉体的不妊改善に心理療法を併用することがポイント

さて、もつれてしまいそうな状況を整理してみましょう。

不妊は肉体的要員によって起こります。
ストレスは不妊という結果によって増大し、それが、あらたな不妊の原因になり、不妊が重症化してしまう傾向にあるわけです。

ですから、まずは、自然な療法にしろ、不妊治療を受けるにしろ、基本は肉体的な要因を取り除くことです。

しかし、それだけでは、増大するストレスとのいたちごっこです。
そんなプロセスで感じるストレスや不安、焦り等の心理的要素を心理療法を併用することで軽減することが、どうしても必要です。

私は、毎日、アメリカやヨーロッパの不妊関連のニュースをチェックしていますが、どうも最近の傾向として、不妊治療で受けるストレスをいかに軽減して、治療の成功率を上げるかというテーマが多いように感じます。
このことも、これまで述べてきたことを裏付けるものでしょう。

心理療法のキーワードは"気持ち良い"

それでは、どんな心理療法に取組めば良いのでしょうか。

極論すると、「不安感」、「抑うつ感」を緩和されるものであれば何でも良いのです。

この場合、大切なことは、 心とカラダが"気持ち良く"感じること、です。決して、ストレスを解消するために、という義務感で取組んでも 長続きしませんし、効果があるかも疑問です。

朝の散歩にしても、朝早く、起きるのが億劫であれば無理することはないのです。朝の新鮮な空気をカラダ一杯に取り込んで、カラダを動かすことが本当に気持ち良く感じるから散歩するのです。カラダの健康のためにやるのではなく、気持ちの良いことをみつけてみましょう。
ヨガもしかり、気功もしかり、 鍼灸や整体もしかり、です。

不妊に悩み出すと、たとえ気の合う友人でもなかなか分かりあうことは難しいものです。
そこで、同じ悩みを持つ女性同士、思いっきりしゃべり尽くすのもとっても気持ちが晴れるもの。

そして、気持ちの良いことは長く続きます。
よく妊娠のためには、 控えた方が良い食べ物や嗜好はなにかとか、積極的にとった方が良いものはないかとかいう質問を頂きますが、これとて、正解なんてありません。好きなものを我慢することでストレスを感じるのであれば、たとえ一般には良くないとされているものでも 我慢することは逆効果です。

不妊を改善する上で大切なのは、どうも、頑張りや我慢ではないようです。

セックスは"頑張って"するものではないはずです、心にもカラダにもとっても"気持ちの良い"セックスを 存分に楽しんでいますか?