不妊
 
 
 
 
焦りが、“不必要かもしれない治療”を決意させる
2004/2/1
 

高度な不妊治療への公的な助成が04年度の予算に計上されました。

一見、グッドニュースのように聞こえますが、
それによって“不必要な不妊治療”の増加も懸念されるところです。

オールアバウトジャパンの不妊治療のガイドである池上氏もガイド記事で、
助成金が認められることによる懸念として、
「患者増」を当て込んだ即席不妊専門医が増えるのではないか、
要するに、助成金は体外受精や顕微授精などの高度生殖医療が対象ですから、
急に体外受精を始めるようなクリニックが増えるのではということ、
また、これまで実績のある施設でも、
体外受精を積極的に薦めるようになるのではということを挙げておられます。

このような懸念は、
とりもなおさず体外受精等の高度な生殖医療には、
経済的な負担の大きさもさることながら、
女性のカラダに大きな負担がかかること、
多胎の確率が高まることを始めとして、
さまざまなリスクを抱える治療であるいう側面があるからに他成りません。

当然、多くの施設では、
もう、体外受精による治療しか妊娠の可能性はない、
との慎重な見極めがなされて初めて移行する旨の方針を掲げているところがほとんどです。

日本産婦人科学会の会告でも、「体外受精・胚移植」に関する見解では、
「これ以外の医療行為によって妊娠成立の見込みがないと判断されるものを対象とする」
とあります。

ところが、経済的な負担が大きいということは、
クリニックにとっては、大きな“売り上げ”になるのです。
ですから、“体外受精しか、妊娠の可能性がないという判断”が、
施設によって大きく違ってくるわけです。

ここが、本当に難しいところです。

誰しも自然な妊娠によって子宝を授かることを希望しています。
誰も好きで治療をステップアップしているわけではありません。


不妊症(Infertility)には、自然妊娠の可能性のない不妊症(Sterility) と、
自然妊娠の可能性がある不妊症(Subfertility)があります。

果たして、自分はどっちなんだろう?

自然妊娠の可能性があるのなら、
ステップアップの必要性はとても低くなりますし、
自然妊娠の可能性がないのであれば、
直ぐにでもステップアップするべきです。

不妊治療が辛いのは、
この見極めをステップアップしながらでしか、
分からないということに集約されるのではないでしょうか。

要するに本当にこのままで妊娠出来るのだろうか、 という不安です。
この不安がストレスとなって、
より妊娠を遠ざけるという、
“不妊スパイラル”(読者方からのメールにありました)に陥るのです。

また、この不安にドライブをかけているのは、周囲の“目”です。
秋田大学医学部附属病院産婦人科が昨年夏に、
不妊症の方411人に対して実施した「不妊治療アンケート」の結果によりますと、
妊娠しないことによる悩みのトップは、
なんと、 「近所や職場など周囲の目が気になる」(48.9%)というものでした。
本人にも、周囲にも、 結婚すれば子供が出来て当然という意識があるようです。
自分自身の治療の見通しのあやふやさに対する不安に加えて、
周囲の“目”との闘いというストレスが、 焦りとなるのです。

そして、その“焦り”こそが、
「もしかしたら不必要かも知れない高度な生殖医療」を受けることを
決断させるのではないでしょうか。


ここに驚くべき内容、と言いますか、 勇気づけられる報告があります。
大規模の調査の結果、 不妊症と診断されたカップルで、
本当に不妊治療が必要なカップル、
言い換えれば、不妊治療を受けなければ妊娠出来ないカップルの割合は、
私たちが思っているよりも、かなり低いことが判明したのです。

1年で妊娠出来なかったカップルは、
2年目にほとんど自然妊娠してるというのです。

アメリカの国立環境健康科学研究所
(National Institute of Environment Health Sciences)は、
ヨーロッパでの大規模な調査の結果、
1年間妊娠しな かったカップルが2年目に自然妊娠する割合が高いことから、
最近の傾向を 「不妊と悩むには早すぎる」と発表しています。

この調査は、ヨーロッパの7つの都市で、
1年間避妊しないで、夫婦生活を 持ったにもかかわらず、
妊娠出来なかった782組のカップルを対象として います。

それによると、最初の12周期で妊娠出来なかったカップルの内、
その次の12周期でも妊娠出来なかったカップルの割合は、
女性が19〜26才 では3%、27〜34才では6%、35〜39才では9%でした
。ただし、男性は、 40才以下という条件になっています。

もちろん、妊娠したカップルは、
全て 自然妊娠によるもので、一切、不妊治療は受けていません。

この調査結果を見ると、どうやら1年間、妊娠しなかったからといって、
悩 んだり、焦ったりするのは早計なようです。

不妊症と診断されたほとんどの カップルは2年目に妊娠しているのです。
不必要な不妊治療による人為的、強制的な排卵誘発が、
健康な卵巣の機能を 低下させているとしたら、どうでしょう?

さらに、お金と労力を注ぎ込んで 治療を受けているにもかかわらず、
妊娠出来ないことが、さらに、悩み、焦 らせることになり、
余計に辛くしているとしたら、どうでしょう?

ましてや、 慌てて体外受精にステップアップして、
妊娠出来たものの、
体外受精によらなくても妊娠出来ていたとしたら、どうでしょう?

これまで、不妊治療においては、この辺りはブラックボックスであったわけです。
そういう意味から、調査結果の意義は大変大きいのではないかと考え ています。
年齢にかかわらず、 1年間妊娠出来なかったカップルの90%以上が、
2年目に自然妊娠しているというデータと、
不妊治療が抱えるさまざま な副作用等のリスクを天秤にかけて、
今後はどのように不妊を改善していくべきか、
よくよく考えるべきではないでしょうか。

ただし、検査は別です。
不妊検査は、早い段階で夫婦で受けるべきでしょう。
確率が低いとは言え、
隠れた疾患や外科治療が必要な不妊原因があるにもかかわらず、
長期間、自然妊娠を目指して努力し続けるのは“悲劇”です。

そ の上で、不妊治療の開始は、
2年近く経過しても妊娠出来なかった場合、と するべきです。
1年間、妊娠しなかったからと言って、
落胆したり、焦ったりする道理が、全くないのです。

私は、不妊症をいかにも“現代病”のごとくに扱い、
多く のカップルを不安に陥れ、
不妊治療に走らせているマスコミに大きな責任があるのでは、と感じています。

自然な療法による「妊娠しやすいカラダづくり」を実践していく上で、
この認識はしっかりと持って頂きたいと考えています。

 
 
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